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お下げ髪の少女 後半

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「孝子の家がこの近くで、このアパートから出て来た父に会ったのが、先週のことです。そのとき、お前の好きな奴がここにしょっちゅう入り浸ってるぞって、父は云ったんです」
「そうなんですか!しかし、有効なパンチの連打でノックダウンしそうですよ」
 緒方は嬉しかった。まぶたから涙が溢れ出た。
「何の話ですか?」
「……僕は美緒さんが好きです。美緒さんもそうだと思っていいんですね?」
 泣きながら、美緒を凝視めて云った。
 そのとき、ドアが再びノックされた。
「はい。どうぞ」
 二人、同じタイミングで云った。緒方は手で涙をぬぐった。美緒が慌ててハンカチを渡した。互いの眼を凝視め合いながら、笑った。
 ここの主が上機嫌な顔で入ってきた。入るなり、小説家は大きな声で云った。
「三角関係だな。美緒が気に入った奴を、そのおやじも気に入った。泣き虫の緒方君。美緒と俺と、どっちを選ぶんだ?」
 緒方も美緒も、涙が止まらなくなった。美緒の父も、眼を潤ませていた。