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CROSS 第13話 『帰投』

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 一匹のとても大きなエイが、エアリアルの1号機の左側からこち
らに向かって接近してきていた。まだ離れた位置にいるが、さっき
までのエイとは倍以上の大きさがあった。エイたちの親玉といった
感じだった。さっそく、犬走椛はその親玉エイを写真に収めていた。
「ここは霧の上なのにな」
「そうだよな。この世界の悪魔は、霧の中じゃないとダメなのにな」
ガリアとヘーゲルが不思議そうにそう言っていた。確かにその通り
のはずだった。
「おい、ヘーゲル! なんで霧の上に悪魔がいるんだ?」
山口はバッジでヘーゲルに言った。
『よく見てください少佐。あの悪魔は無理して飛んでいるようです』
ヘーゲルの返答を聞いた山口は、目をこらして、親玉エイを見てみ
た。妖夢はカード型通信機でどこかと連絡していた。
 確かに、親玉エイは、この世界の悪魔が苦手としている霧の外側
を無理して飛んでいるようだった。たまにバランスを崩しながら飛
んでいるところを見ると、かなりの体力を使って飛んでいるようだ
った。
「ほっといても死ぬか」
山口がそう言ったそのとき、親玉エイが光り始め、約10秒後、大
量のトゲをエアリアルに向かって放ってきた……。まるで機関銃の
ような発射音がした。
 その大量のトゲは、嵐のようにエアリアルに襲った。シールドを
していたため、跳ね返されたトゲが下へ落下していく。
『シールド、ダウンしました』
攻撃の後、上社たちがいた2号機でも流れた同じコンピューター音
声が、機内に流れた……。よほど強い攻撃を受けたのだろう。機体
が騒然となった……。
「コンピューター、あのエイをすぐに撃ち落とせ!!!」
山口がエアリアルのコンピューターに向かって叫んだ。
『申しわけありません。全砲、弾切れの状態です』
コンピューターが静かにそう告げる。どうやら、離陸して霧の上に
出るときまでに全て撃ち尽くしてしまったようだった……。
 親玉エイがまた攻撃しようと光り始めた。山口は「これまでか」
とつぶやき、顔を伏せた。

   チュチュチュチュチュチュチュチュチュチュン!!!

 そのとき、変わった連続音が聞こえてきた。エイのトゲマシンガ
ンの音とは全然違うのはすぐにわかったため、山口は顔を上げて、
窓の外を見てみた。

 あの親玉エイが、大量の魔弾による攻撃を受けていた。弾道は3
本あり、魔弾攻撃が終わった次の瞬間、エアリアルの上を、3つの
小型の飛行物体が通り過ぎていった。
 その3つの小型の飛行物体とは、幻想共和国軍の主力戦闘機『飛
蝶』だった。翼部分に当たる羽の色が、3機とも微妙に違っていた。
「念のためにと、私が応援を呼んだんです。3機とも、白玉楼のエ
 ースパイロットのプリズムリバー三姉妹が操縦しています」
山口に向かって妖夢が言った。さっき妖夢が連絡していた相手は、
白玉楼の味方らしかった。色が違うのは、彼女たちの色を反映して
いるからのようだ。
「……あ…ありがと」
山口は小声で妖夢に向かってそう言った。非情に言いづらそうにし
ていた……。
「この飛行機が撃ち落とされたら、私と犬走椛まで死んじゃうじゃ
 ないですか。もし、CROSSといっしょに死んだら、本国で笑
 い者です」
妖夢は素っ気無くそう言った。