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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 男達は笑いながら、雑踏に消えていく。それは会社とは別の方角であり……ということは、間は、打ち合わせに欠席をするつもりなのか。打ち合わせを放り出してラーメンを食いにいく。それは、職業人として、正しい姿なのか。正論に激昂し、影でキレまくり、その様子はすでに丸山花世たちにも伝えられている。そのような男が、打ち合わせを拒否して飯を食いにいく。
 「お、おい、てめー、ちょっと、待てコラ!」
 丸山花世は走り出そうとする。なんとしても不埒な、作品の神様につばを吐き続けるクソ野郎をとっ捕まえて張り倒してやらなければならない……だが。そこで、大井弘子が妹を制した。
 「放っておきましょう。あの人は自分が逃げていることを理解している」
 「でもよ……アネキ」
 蹴りを入れてやらなければ気がすまない妹に対して姉はより冷酷だった。
 「逃げてる限り、永遠に自分の作品は作れない。だったら好きなだけ逃がしてやればいいのよ」
 「……」
 「他人にも向き合わない。自分にも向き合わない。それは、どこにも通じてない道なのだから」
 
 代表作――なし。
 
 それが間正三郎の死ぬまでの経歴。本人がそれでいいのならばそれで構わない。他人がどうこう言う問題ではないだろう。
 「行きましょう」
 大井弘子は歩き始める。羅刹モードに入った大井弘子は妹からしてもすこし恐ろしい。
 いつものように。いつもの道を姉妹並んで歩く。大通りを渡り、雑踏を過ぎ、いつものオフィスビル。看板のかかったオフィスビル一階置くの扉。いつもは丸山花世がインターホンをとる。だが、その日は大井弘子自らがインターホンを取った。
 ――これは、出入りだな。
 小娘は思った。完全な喧嘩、である。
 「大井一矢と申します。はい……そうです」
 大井弘子はインターホンを置き、やがて、いつものヒゲが目をショボショボさせて出てきた。
 「……いや、どうも……」
 社内でのポジション争いに明け暮れる中年男。業務以外のところで体力の損耗が起こる会社は大抵左前。
 「えーと、社内でもいろいろとありまして……とにかく、奥へどうぞ」
 「……」