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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 ◆五 破滅
 
 週が明けて月曜日。
 すでにあたりは秋の風。
 高校も再開し、で、あるから小娘は再び青書生に逆戻り。また灰色の教室で話のあわない連中と、人生を棒に振ったウーマンリブの闘士の説教を聴く毎日が始まる――否。その前に。
 「ん……」
 恵比寿駅で待ち合わせをしていた小娘は頷いた。改札からちょっと険しい表情の姉が出てくるのを見とめたからである。
 十五時十五分――。
 これから激戦に赴く。
 場合によっては、姉妹の傭兵軍団は戦列から離れることも覚悟せねばならない。
 ――作品は……いとおしいんだけれど……。
 丸山花世は姉がそのように呟くのを聞いている。長く続いてきた作品。九年も続いてきた作品。その作品についている女神はとても健気で、一途。
 大井弘子は作品についている女神のことを体感として理解しているようであり……丸山花世もその気配を察知している。
 ――作品についている神様に触れるとは、こういうことか。
 それは有名作家だからといって必ずしもたどり着けない境地。作品の神様に触れること。物語の神様の声をじかに聞くこと――。
 ――なんとか……エターをうまく続けられないだろうか。
 小娘もそれは思っているのだ。全てが丸く収まる方法はないのか。だが。愚鈍な社員達を見ている限り、すでに『丸く収まる』というレベルで話は済まなくなっている。
 「行きましょう」
 三度16CCに乗り込む。
 あるいは、これが最後の打ち合わせとなるか――。
 と。恵比寿駅を出た、小娘の足が止まった。
 「ちょっと、アネキ……」
 見知った顔。雑踏の中に、丸山花世は良く知った顔を見出したのだ。それは、色黒のちんちくりん。かつての同僚や外注先の恨みを買った、本人だけが自分をビジュアル系と信じて疑わない男。チーフ・グラフィッカー、間正三郎。間は、ひどく上機嫌な様子で同僚かあるいは部下だろうか、肩を叩きながら喚いている。
 「ラーメンだ、ラーメン。おごれよな!」