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CROSS 第11話 『奇妙な夜間行軍』

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 佐世保はしばらく山口を探していたが、見つからなかったため、仕方なく、指揮官室にいるヘーゲルに緊急通信のことを伝えた。ヘーゲルが佐世保に撤退命令を伝えられたときも、彼は無表情で淡々としていた。そして、ヘーゲルが山口の代理で、撤退に関する作業を指示しようとしたそのとき、
「ヘーゲル大尉! 山口の居所がわかりました!」
ガリアが指揮官室に入って来てそう言った。
「山口はどこだね?」
ガリアはヘーゲルの後ろの電子マップのあるところを指さして、
「この『腐れ谷』というエリアに墜落したエアリアルに乗っていたようです……」
「……山口さんの安否は?」
「……不明です」
そのガリアの言葉に、佐世保は頭を押さえて倒れそうになっていた……。

   ピー! ピー! ピー!

 その時、ヘーゲルのバッジ型通信機が着信音を鳴らした。ヘーゲルはすぐに通信を始める。
『……ヘーゲルか? オレだ』
通信相手は山口だった。ヘーゲルは、その場にいる全員に聞こえるように、音を大きくする。
『エアリアル…乗っていたら、墜落しちゃって…。 すぐに迎えにきてほしい…だが』
少し雑音が入っていた。どうやら、通信環境が悪いようだ。それでも、山口が少なくとも喋れる状態であることがわかり、一同はほっとしていた。
「すみませんが、発信器をオンにしてもらえますか?」
『……わかった』
少しゴソゴソとした音がした後、指揮官室の電子マップ上に水色に点滅する×印が現れた。その×印は、山口が現在いる場所を示しており、発信器は特殊ゴーグルに埋め込まれていた。
「山口、申しわけありませんが、今おられる『腐れ谷』では、安全に救助することができません。 見通しが良い『ラトリアの塔』に移動していただけますか?」
ヘーゲルのその淡々とした酷な言葉に山口は閉口した様子だったが、
『あそ…にチラリと見え…塔に移動しろと? 暗闇恐怖症の奴がいる…だぞ!』
『……冗談じゃな………よ!!!』
『……少し黙って……くれ……か!?』
山口の後ろから声がした。必死さが感じられた……。
「山口の他に誰かいるのですか?」
『……ああ、例の幻想共…国の「親善」大使が…!』
「なるほど、一人では無いのなら、まだ安心できますよ。そこは危険地帯ですからね」
ヘーゲルがそう言ったとき、指揮官室に通信兵が書類を片手に入ってきた。その通信兵はノックもせずに指揮官室に入ったため、佐世保が睨んだ。通信兵は彼女の睨みをスルーして、ヘーゲルに持ってきた書類を手渡す。そして、すぐに部屋から出ていった。