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CROSS 第10話 『駆け引き』

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 穴の向こう側では、佐世保が心配そうに穴の近くにしゃがみこんでいた。彼女は、山口の右足に矢が刺さっているのを見つけると、慌て始めた。彼は「大丈夫だ」と言って宥めた。
「肩を……貸してくれるか……?」
「構いませんが、私の右肩の傷には気をつけてくださいね。まだ痛いんです」
山口は右腕を、佐世保の首に回した。お互いに痛むため、ゆっくりとした足取りだった。
 今くぐってきた門は、鉄格子の門ではないため、門の向こう側の様子はつかめなかったが、山口と佐世保が通った穴に敵兵が殺到しているのがわかった。ただ、鎧などを装備しているため、うまくくぐれなかった……。

 やがて、山口と佐世保は、トラックでできた「橋」に到着した。「橋」はまだ渡れそうだったが、強くなってきた風のせいで、少し揺れていた。山口と佐世保は慎重に、その揺れる「橋」を渡り始めた。
 そのとき、あの鉄製の門が上に開いた。開いた途端、敵兵がワッと飛び出した。そして、敵兵たちは、山口たちのほうへ全力で向かってく。
 それを見た山口たちは、乱暴にそのまま渡り終えた。乱暴に渡ったため、「橋」は大きく揺れていた。そこに、敵兵たちがやってきて、もっと乱暴に「橋」の上に乗った。
 その途端、「橋」のトラックは城壁の下へ落下してしまった。「橋」の上にいた敵兵たちもいっしょに落下していった。
 これで敵兵たちは山口たちのほうへ行くことができなくなったわけだが、弓矢を持った敵兵はあきらめたわけではなく、矢を山口たちに向かって放ち始めた。何本かの矢が、山口たちの体をかすめた。
今にも矢が命中しそうだった。
 そのとき、城壁の上の通路の向こうから一台のサイドカー付きのオートバイが全速力で走ってきた。そのオートバイは、あのオートバイ型ロボットのジャイロだった。ジャイロは山口たちに向かってパッシングする。
 ジャイロは山口たちのすぐ近くまで来ると、弓矢を持った敵兵を中心に、車体に装備してある2丁の機関銃を撃ち始めた。銃弾は的確に敵兵をどんどん倒していった。機関銃の銃弾は、敵兵の鎧を貫通して、鎧の中で血をぶちまけさせていた。
 山口たちは、ジャイロの銃撃に巻きこまれないように、少し通回りする形で、ジャイロに乗りこんだ。山口は佐世保に支えられながらサイドカーに乗りこんでいた。矢が刺さっている場所からの出血は激しくなっていた。血がサイドカーの座席シートに染みこむ。矢が食いこんだりしない姿勢になっていた。
「山口、オートバイに命令を」
佐世保がオートバイ本体にまたがってから山口に言った。
「……ジャイロ、基地に……帰るぞ」
山口は苦しそうに言った。
『了解』
単調な声でジャイロが答える。
 そして、ジャイロは、まだ矢が飛び交っている中、基地に向かって走り出した。そして、山口たちがはるか遠くまで離れると、敵兵たちは悔しそうにも聞こえる声を上げていた……。