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陰陽戦記TAKERU 後編

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 武達の見守る中、夜の京都の上空では美和と饕餮が壮絶な剣撃戦を繰り広げていた。
『何故だ。理解できぬ!』
 饕餮は美和の記憶を奪った際に記憶を覗き込んだ。
 そして人と違う力を持つあまり人々から迫害されてきた事を知った。
『貴様は何故人間の為に戦う? 貴様は知らぬだろうが我々は……』 
「知ってるわ、元々人間なんでしょう、」
 美和は拓朗から全ての経緯を聞いた。
 四凶が人間だと言う事も、無論暗黒天帝が生きていると言う事もだ。
「でもだから何だって言うの?」
『何?』
 美和の瞳に強い光が灯っていた。
「私はそんな事で…… 人間に絶望しないわ!」
『貴様は人間と言う物を何も分かっていないようだな、人間がどれだけ身勝手な存在か…… それを貴様は知らぬ訳ではあるまい!』
 饕餮は眼下に広がる町を見回した。
『人間など、普段は得体の知れぬ物や理解できぬ力に怯えるくせに、危機に直面すればそれにすら縋りつき、用が済めばゴミのように捨てる…… そんな連中に守る価値が有るというのか?』
「そんなの関係ないわ!」
 美和は言いきる、
「確かに私は人間を憎んだし、滅んでも良いと思った。それは否定しない、一歩間違えば私も貴方と同じになったかもしれない……」
『ほう、つまりは認めると?』
「ええ、救う価値が無い人間がいると言う時点ではね…… でも!」
 美和は双剣の柄頭を合わせると朱雀の変形して弓となった。
 そして弓を引く構えになると弓全体が発光した。
「例え救う価値が無くとも、未来が闇に閉ざされても…… たった1人でも構わない、その人がいれば人間は変われるっ! 絶望を希望に変える事だって出来る!」
 美和の心にこの世界に来て出会った人達の顔が浮かび上がった。
 その者達こそが美和の希望だった。
「だから私は、希望を守る為に戦うっ!」
 弓全体の光が弓摺部分に集まると高密度のエネルギーとなって放たれた。
 饕餮は両手の剣を消滅させると両手の中に黒い球体状エネルギーが出来上がった。それを一つに合わせると目の前に迫り来る攻撃に向って放った。
『小癪なぁ――――ッ!』
 黒い怪光線となって放たれた饕餮の攻撃が美和の攻撃とぶつかり合った。
「くっ……」
『ぐぅ……』
 互いの力は全く互角…… いや、僅かだが美和の方が押していた。
 それは自分の戦うべき答えを見つけたからだった。
 今までは鬼を倒すのは陰陽師である自分の役目だと思っていた。
 だけど今は違う、それは守りたい者ができたからだった。
 心の底から守りたいと思う者、全てを投げ捨てででも守りたいと思う人々、その者達の笑顔と未来、それが美和の守るべき世界だった。
「悪鬼消滅っ!」
 さらに法力を注ぎ込むと饕餮の怪光線を散り散りに吹き飛ばして饕餮を飲み込んだ。
『ぐああああああっ!』
 饕餮は断末魔を上げながら光の中に飲み込まれて消滅した。