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陰陽戦記TAKERU 後編

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 目を開けると俺達は星明町から遠く離れた京都の北野天満宮にやって来た。
 ちゃんと入り口にそう書いてある、
「懐かしいな、あの時と同じままだ。」
 確かに、夜と言う事もあり人通りが少ないが建物事体は変わってない、
 まぁ3年ちょっとじゃそんなモノだろ、
 だけど違う所が1つだけあった。
「ビンゴだな」
 俺達は鳥居を潜って中に入る、
 すると社の屋根の上に加奈葉がいた。
「なんだ。もう追いかけてきたのか?」
「ああ、加奈葉を返してもらう為にな」
「フン、何をバカな。誰の責任でこうなったのか忘れた訳ではあるまい? しかも暗黒の傀儡まで連れて来て」
「うるせぇよ、テメェはタダの便乗だろ、黙ってろ!」
 こいつはタダ人の弱みに付け込んでぶら下がってるだけだ。
 それに人の恐怖心を増幅させる力だって今の俺には通用しない、
「学、なるべく奴の目は見るな」
「ああ、君に聞いてるよ」
 四凶の戦いは以前にも話していた。
 ある程度の対策は練ってある、
 だけど奴の事だ。
 きっと何か企んでるんだろうな、
「だが良いのか? 貴様1人で…… しかもその役立たずに何が出来る?」
「できるさ、こいつはテメェの数倍強いんだからよ!」
「何っ?」
「そして俺の力と加えれば1000人力だぜ!」
 饕餮は加奈葉の顔を顰める、
「ほう、それならば見せてもらおうか! 貴様等の力と言う物をな!」
 饕餮が指を鳴らすと建物の隙間から無数の怪しい光が出現した。
「何だ?」
「武、鬼だ!」
 学の言うとおりだった。
 大きさは俺の握りこぶししかないだろう、耳が大きな鼠のような顔に1本の角が生えた腹が太く、3本指の2本の腕と逆関節の足に長い尻尾が生えた鬼だった。しかもその数は軽く20は越えている、
「学、下がってろ!」
 俺は鬼斬り丸を抜刀すると鬼達に向かって斬りかかった。
『ギャアアッ!』
『ピギィイッ!』
 鬼達は奇声を放って消えていった。
 こいつらは大して強くない、
 少し力を入れれば一振りで一気に3~4体は消す事ができる、だけど……
「くそっ、斬っても斬っても出てくるぜ!」
 もう20体以上は倒してる、だけどこいつらは次々にあふれ出てくる、このままじゃ俺の方が力尽きる、
 カラクリは分かってる、この鬼達は分裂する一式の鬼で親を倒せば子の方は消滅する、だけど問題はその親がどこにいるかだった。
「本当は作った本人潰せりゃそれでいいんだろうけど……」
 俺は饕餮を見る、
 あの野郎がそう簡単にやらせてくれるはずがねぇ、
 ましてや加奈葉を傷つける訳にもいかねぇし……
「うわああっ!」
 俺が振り向くとそこでは学が鬼に襲われていた。
 足元から這い上がってきた鬼達が学を覆い尽くそうとしていた。
「しまった!」
 鬼は俺が相手している場所ではなかった。
 建物を影に大きく迂回した鬼達が背後から学に襲いかかったのだった。
 学は必死で抵抗するが生身の人間が鬼を払う事はできなかった。
「はははっ! そのまま鬼に喰われてしまえ!」
「野郎!」
 加奈葉の口から何て事言いやがる?
 だけど俺の方も数が多すぎて学の助太刀にはいけなかった。
「くっ……」
 学はたまらなくその場に膝をつく、
 そして鬼に包まれて学の姿は見えなくなった。
「学っ! クソォ!」
 俺はなりふり構わず麒麟の力を解放しようとした。
 確かに学は死を覚悟でここに来た。
 だけどこいつが死んだら加奈葉だけ助けても意味は無い、きっと加奈葉は責任を感じるだろう、
 下手すれば学の後を追って自殺するかもしれない、あいつは下手なところで責任感が強すぎる、
 だがその時だった。
『ピギィィ――ッ!』
 学を襲った鬼達は奇声を上げながら爆発した。
「なっ?」
 俺も饕餮も目を見開いた。
 奴と同じ反応なんて俺だって御免だが学の今の姿を見ると誰しもが同じ状況に生るだろう、
 学はかつて俺と戦った鬼の鎧(正確に言えば鎧型の鬼)を身に纏い黒い大剣を握っていた。
「お前、それ……」
 確か俺が麒麟を復活させた時に完全にバラバラになったはずだった。
 まして暗黒天帝が死んだら全ての鬼が消えるはず…… なのにどうして?
「この鬼は特別で…… 暗黒天帝が僕の生命エネルギーと連動して作り上げた物なんだ。つまり僕自身か本体を倒さない限り何度でも蘇るんだ」
 鬼の本体は俺がバラバラにした媒介である携帯電話に忍ばせておいた。そして本体はメモリーカードに入っていてそれは無傷で残っていたらしい、
 そして聖獣達の気を溜めておいたバッテリーと掛け合わせ、改良に改良を重ねて先日完成したと言う、
 見た目や性能は同じだが基本的に法力を持たない学でも陽の気を充電させれば動かせるようになったと言う、
「同じ鬼の力なら鬼を倒す事が出来る、今まで迷ってたけど武や桐生さん達の言葉で決心が付いた。僕はこの力で加奈葉ちゃんを助ける!」
「……そうか、じゃあ一緒に加奈葉を助けようぜ!」
 俺達は肩を並べて屋根の上で口をへの字に曲げた饕餮を見上げた。