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陰陽戦記TAKERU 後編

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 それから三時間かけて東京駅に到着、
 さらに電車をいくつも乗り換えて俺達が星明町に戻って来たのは軽く正午を回っていた。
「何かあったら連絡してくれ、必ず駆け付ける」
 桐生さんはそれだけ言うと自分の車で去って行った。
「じゃあ、俺達も別れるか」
 俺が背を見せて歩きだした瞬間、
「先輩!」
 拓郎が俺を呼び止めた。
「その、元気出してくださいね」
「何がだ?」
「何がって、美和お姉ちゃんの事……」
「そうですよ、美和さんはもう……」
「バカ野郎、美和さんとはまた会えるよ」
「「「「えっ?」」」」
 みんな不思議な顔をした。
「だけどタイムトンネルは二度と開かないんだぞ?」
「だから何だ? 美和さんはあの時な、『さよなら』なんて言わなかった。きっとそのうちひょっこり出てくるよ」
「何でそんな事が言えんのよ?」
「あのな、タイムスリップなんて漫画やアニメでしか見た事ない事が実際起こったんだぞ、世の中何があるか分からねぇんだ。どうせならそう思った方がいいだろ」
 半分は強がりだった。
 実際本当に会える可能性なんて0に近い、だけど俺は帰ってくるまでに考えた。俺は美和さんの言った言葉を信じるってな、
「じゃあな、俺ちょっとよる所があるから」
 俺は学達に背を向けると手を振って別れた。
 
 歩く事数十分、
 やってきたのは美和さんと出会った橋の上だった。
 そして道真と最初に戦った場所でもある、
「まさか、女の子が空から降ってくるとは思わなかったぜ」
 そりゃ少しは世の中は変われば良いと思ってはいたが、そりゃまさかこんな事になるなんてな、
 そしてここで一度世界の命運をかけて道真と戦った。
 誰に言っても信じてはくれないだろうな、いっそ作家にでもなろうかと考えたがやがて止めた。
 これは自分の心の中にだけ仕舞っておこうと思った。

 そしてやっと我が家に帰って来た。
 長い一日がやっと終わって何年も帰って無いかのようだった。
『くぅ~ん、』
 ライブが出迎えてくれた。
 そう言えばこいつに餌やって無かったな、
「少し待っててくれ、今用意するからよ」
 俺は玄関を開けた。
「ただいま」
 しかし誰も返事をする人間はいなかった。
 俺は無言のまま家に上がると台所からドッグフードを持ってライブの元へやって来た。
「たくさん食えよ」
 ライブはドッグフードを頬張った。
「ライブ、もう美和さんがいないんだ、これからは俺と2人暮らしだぜ」
『クゥ~ン』
 分かってんのかなこいつ? やたらと淋しげに鳴きやがる、
「俺はもう休むからな」
 俺は家の中に入った。
 向かったのは自室じゃなくて美和さんの部屋、全てが綺麗に片付いている、
 そして机の上にはノラえもんのストラップの付いた携帯電話やこっちの世界で使っていた物が置いてあった。
「美和さん……」
 俺は美和さんの携帯電話を握りしめると両肩を震わせて泣き出した。
「くそぉーっ!」
 携帯電話を握りしめた右手にさらに力を入れると俺は目の前の壁を殴りつけた。
 俺は美和さんを信じるって決めた。
 だけど俺の心は凄く切なく苦しかった。どんな攻撃を受けたよりも辛かった。
「本当にこれで良かったのかよ? ……美和さん、」
 右拳にズキズキと痛みが走る、でもそんな事は問題じゃない、もう美和さんに会えない、もう美和さんはここにいない、その現実が俺に重くのしかかった。