小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

やるせないような気がした春。

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

気付くと僕はベッド上で物思いに耽ったまま、寝てしまっていた。
バイトに行った時に忘れた、枕元にある携帯電話に手を伸ばすと時刻はすでに20時をさしていた。
ベッドから起きてカーテンを閉めて、電気をつけると一つ気付いた。
まだ雪香が帰ってきていなかった。
「もう20時だよな・・・・・・」
二人の決めごとに帰宅が20時をすぎるときは連絡を必ずいれる、というものがあった。
しかし留守電はおろか、メールすら来ていなかった。
玄関にいってみると傘は僕が前にコンビニで買ったビニール傘しかなかった。
雪香が家に来た時は、携帯電話と財布以外の持ち物は無かった。もっと言うと、服はその時に身につけているものだった。だから今度の週末に服を買いに行くと言っていたのだ。
そして雪香の財布は家にある。
外は未だに横殴りの激しい雨が降っている。
雪香も来月には俺と同じ大学2年生だろ、大丈夫だ。
そう心に言い聞かせるも、心は落ち着かなかった。
気付くと僕は雪香の携帯に電話をかけていた。
10回ほど呼び出し鈴がなってから電話に出る音がした。
「おい、雪香。なにしてんだよ」
「・・・・・・ん」
雨の音が邪魔をして雪香の声が聞こえなかった。
「なにって? ていうかお前いま外にいるのか? 傘ないだろ。そっち行くから、どこだよ?」
「・・・・・・ごめん」
雪香は電話越しにそう言っていた。前に、大学で名塚との関係を打ち明けられた時のように泣きながら。
しかし雪香は「ごめん」と言っていた。どういうことなんだ。
「まて、そっちに行くから! 今どこだ!」
僕は携帯の向こうの雪香に怒鳴る。
近くて遠いもどかしい感じだ。
「・・・・・・駅前通りの・・・・・・3ちょ・・・・・・うさてん」
断片的にしか聞こえなかったけど「下北沢駅前3丁目交差点」と言ったことが分かった。
「今から行くから動くなよ!」
そう言って僕は電話を切る。
交差点まではここから走って一時間。
自転車なら20分だ。
選択の余地はなかった。
僕は携帯片手に急いて自転車に向かった。