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やるせないような気がした春。

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その日は激しい横殴りの雨が降っていた。
僕は傘を持っていなかったのでバイト先の喫茶店から自転車で急いで自室のあるアパートに帰って来たものの、結局はズブ濡れだった。
自転車置き場に自転車を止め、そこでシャツを脱ぎ雑巾のように絞ったら今の雨の量に負けないくらいの水が出てきた。
シャツを脱いで体が急に冷えたからか、僕は大きなくしゃみをした。
しかしその音も、横殴りの雨がかき消した。
僕は絞ってくしゃくしゃになったTシャツを着るのが面倒になり肩にかけて、そのまま二階にある自室へと走った。
この時間なら雪香はバイトも無いし、既に家にいるはずだ。
僕はそう思いながら扉を開ける。
「ただいまーっと」
いつもなら「おかえり」と言ってくれるのだが、返事は無かった。
不貞寝でもしているのかと、居間に入ってもいない。
どこか外出したのか、そう思い僕は肩にかけっぱなしだったTシャツの存在に気付いた。
「あぁ、洗濯しよ」
その場で裸になり脱いだ物を、洗濯機の中に放り込んだ。そしてそのまま、風呂場に入ってシャワーを浴びた。
雨水で冷えた体に温水は、僕の体を一気に包み込み温めた。
5分ほどシャワーで体を温めてから着替えを取りに居間に戻ってみても、雪香はまだ帰ってきていなかった。
まぁ、まだ5分だし心配する事でもないよな。
そう思って僕はベッドに横になる。
よく考えてみると、雪香と同棲を始めてもう2日。
まだ2日か、早いのか遅いのかはよくわからない。何せ、女性と屋根の下で共同生活なんて初めての経験だ。
昨日は、雪香と話あってお互いに料理当番などの家事をしようと決めた。そしてお互い、呼び合うときは下の名前で呼び、敬語は禁止ということ。
これは雪香の提案だった。
「私の勝手だけど、これからは一緒に住ませてもらう事になりました。だからこれからはお互い、謙遜なしで過ごしましょう。私が言うのも変ですが、先輩後輩の壁を解消しましょう」
壁はもう少し違うところにないのかな、そう思った僕だったが何も言わなかった。