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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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16

電車に乗って、駅から家までの道を歩く。
暗くなってからは、ほとんど人気のない住宅街。
重い口を最初に開いたのは孝志だった
「司・・・ごめんな」
「なんで孝志が謝るの?」
「何も気づいてやれなかったことと・・・最初から俺が・・・」
「それ以上は言わないでよ。孝志は助けに来てくれたし、結果的には俺たちの理想形でおさまった。それで十分でしょ?それに本当にあやまらなきゃいけないのは、俺だし・・」
「え?」
「あの記事のこととかその後の嫌がらせとか、全部、俺が孝志を巻き込んでるんだよ」
「そんなの司のせいじゃないだろ」
「・・・嫌がらせ、まだ続いてるの?」
「まあ、な。でも実害があるわけじゃないし、そのうち収まるだろ」
「その犯人も見つけたら、一生俺に頭があがらないくらいの弱み探してつきつけてやる」
物騒なことを言って、司が少し笑顔になった。
その笑顔がまだ不自然なのを、孝志は司がまだショックから抜けきれないからだと思っていた。
その通りではあったが、二人のさしている『ショック』は違う。
孝志は小沢綾人のことを思い、司が思うのは行田秀悟のこと。

行田秀悟は誰よりも孝志に信頼されている人間。
テストのときから、ことあるごとに二人が一緒にいるのが目につく。
新聞部の部室にメモを叩きつけて出てきたときも、孝志が一番に会いに行った人はあの人だった。
そして、今日も。
孝志の声が聞こえたときも姿が見えたときも、自分のために怒ってくれてることもすごく嬉しかった。
それでもあの時、孝志の拳を止めたのは、自分じゃない。
行田先輩がすべて上手く治めた。

きっと自分と一緒にいると孝志には苦難しかやってこない。
でも、行田先輩と一緒にいると、二人はベストパートナーのような気さえする。

こんなことが、前にもあった。
約半年前。池野雅実。
おとなしくて、傍目からみてもかわいいと評されるような子。
朝はいつも一番に教室にいて花瓶の水を替えたり、空気の入れ替えをしたり。
孝志の隣に並ぶと、目を背けたくなるくらい絵になった。
俺は、好きでもないのに付き合うなんて失礼だ、って言った。
好きになっていけそうな気がする、と孝志は話した。
その後のことはもう思い出したくもない。

結局、孝志は翌日には池野と別れていたけれど、その傷跡は今もくっきりと残っている。
俺がいつまでたっても孝志との関係を進展させられないのは、その傷跡のせい。
『冗談でもそういうことするのは勘弁してくれ』
一度拒否された事実は変わらない。
結局なにもなかったことにして、幼馴染を続けている。

あの時は池野の片思いだったけど、今回は状況が違う。
間違いなく孝志は行田先輩に心惹かれてる。
行田先輩も・・・もしかしたら。

・・・どうする?
そう自分に問いかけてみたところで結局何もできないことに気づく。
孝志と行田がどうにかなったところで、どうしようもない。
ただ、現実を受け入れなくてはならない。

その日が来ないのを願うことしか、今の司にはできない。

「司?」
名前を呼ぶ声に、現実に引き戻される。
「え、ごめん、何?」
「いや、家についたけど」
見ると、そこにあるのは紛れもなく自分の家だった。
「大丈夫か?」
「うん、ちょっと考え事してただけ」
「俺にできることがあったら何でもするからな」
心配される資格なんか、今の司にはないのに。
「本当に何でも?」
茶化してそう聞き返した。
「ああ、なんでもいいよ」
愚直な幼馴染はあくまでマジメに答える。
「ゆっくり考えとくよ、ありがと。じゃあね」
「ああ、また明日」
孝志から逃げるようにして家に入った。

―――抱きしめて、キスしてよ。

冗談のようにそう言ったら、どんな顔をしただろう?
半年前の傷跡が残る身には、とてもそんなことはいえなかった。

これから自分たちがどうなるのか、このときはまだ何も考えていなかった。
この先もずっと、いい意味でも悪い意味でも変化しない日常が来ることを心のどこかで信じていた。

『変化しないものなんてない』

その摂理が正しいことを実感するのは、すぐ後。
俺たちの間に黒い影が忍び寄ってることなんて、このときはまだ気づきもしなかった。