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冒険倶楽部活動ファイル

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ファイル1 冒険倶楽部


 私、『河合ほのか』は朝から1人ぼっちだった。お母さんは私が小さかった頃に死んでしまいお父さんに育てられたけれども転校続きで、しかも私がまだ寝ている間に仕事に出かけてしまうので朝ご飯の仕度も後片付けも全部私がしなければならなかった。まぁおかげで家事は得意になった。昨日の内に仕度を済ませておいたランドセルを背負ってポケットの中にハンカチとポケットテッシュを持って仮住まいの小さな一軒家の鍵を掛けて家を出る。他の生徒達と混じりながら海岸沿いの通学路を歩いて行く、誰とも会話をしないまま私は学校に登校しても相変わらず私は誰とも話す事無く自分の席に座って授業開始を待っていると黒い縁取りのメガネに赤と白のチェックのシャツにブラウンのズボンの子が入って来ると教室内の子供達は一斉に振り向いた。彼はこのクラス。いや島でも知らない者はいないほどの有名人だった。
「あ、十波君」
「おはよー」
 クラスメート達は彼に向かって挨拶をする、彼は十波秀徳、この島の権利者の息子だった。同世代とは思えないくらいの落ち着いた物腰だった。
「おはよう、河合さん」
 ちなみに彼の席は私の隣りだった、ランドセルを降ろすと私に挨拶をする、私も十波君に挨拶をする。
「あ、おはよう……」
 唯一と言うべきだろうか、彼とだけはこうして毎朝言葉を交わす、と言うか挨拶だけで別に大した会話はしなかった。

 その後授業が始まりまたいつもと変わらない一日が始まった。勉強もスポーツも十波君は充分に輝いていた。彼が活躍する度に女子達は憧れ男子達も自分達の事のように喜んだ、男子にも女子にも人気のある彼はこのクラスのヒーローだった。でも私にとってはどうでもいい事だった。何しろ私はいずれこの学校を、いや、島を去る事になるのだから…… 私は今日も本を読みながらその時を待つだけだった。

 それから数日後。明日は土曜日で学校が休みになるある日の事…… 私はトイレから帰る途中2階へ降りる階段の側で十波君と2人の男の子達が喋っているのを見かけた。その子達には見覚えがある、少し長い髪を後ろ出束ねた十波君より背の高い半袖のYシャツと黒いズボンの彼は竹内龍太郎君、もう1人は私と同じくらいの大きさで少々癖っ毛が目立つ猫の顔が書かれたTシャツに膝の竹までしか無い短パンの子は藤崎功治君だった。
「……した……だろ?」
 よくは聞えなかったが何かするつもりらしい、
「何してるの?」
 すると私の後ろにニ人の女の子が立っていた。一人はショートカットで胸に赤いリボンとピンクのフリルが沢山ついたワンピースにジーンズスカートと言うお洒落な格好の女の子と右にプラス、左にマイナスの描かれた髪留めでツインテールを作った緑と黄の横縞もようのTシャツにタンクトップ姿の女の子だった。
 二人は同じ学年で、前者は杉原羽須美ちゃん、後者は妹尾舞加奈ちゃんだった。
「きゃあっ?」
 私は思わず飛び出してしまった、すると十波君達と目があった。
「河合さん?」
「あっ……」
 私は十波君達の話を立ち聞きしてしまった事を謝った。
「ごめんなさい、」
「ああ、いいよいいよ別に、どうせ隠すような事でもないし」
「そうなの?」
 私は他の子達にも訪ねる、すると皆頷いた。
「河合さん、今日の放課後暇かな? もし良かったらでいいんだけどちょっと付き合ってくれないかな?」
「えっ?」
 この時は分からなかった。十波君のもう1つの顔を……
「起立ーつ、礼!」
 日直の子が号令をかけて授業終了、私は十波君達と教室を出て学校を出るとやって来たのは十波君のお家だった。ドラマに出てきそうな大きなお屋敷で大正時代に建てられた旧華族のお屋敷だって町の人達は言ってるけど詳しい事は分からないみたいだった。
「河合さん、こっちこっち!」
 私が見とれていると皆裏手の方に向かっていた。私も後を追って行くとそこには二階建ての立派な土蔵が五つ並んでいた。どれも大きな錠前がかけられ…… あ、一番右側の扉だけが鍵が開いていた。十波君は扉の前に立つと私と目を合わせて扉をゆっくりと開けた。
「ようこそ、河合ほのかさん、俺達の『冒険倶楽部』へ!」
 鈍い音とともに扉が開かれた。部屋の中には4本の足の長い机とパイプ椅子が並び、床にはサッカーボールや野球のクラブとバット、窓際には天体望遠鏡、壁には手書きのこの島の地図とボードがあり写真が画鋲で止められていた。
「ここは?」
「俺達のクラブだよ」
「クラブ?」
「うん、冒険倶楽部」
 野球部とかサッカー部とかあるけど冒険倶楽部? 何それ?
「ようするに皆で冒険する倶楽部だよ」
 ますます分からない。冒険と言ったらTVゲームみたいにモンスターと戦ったり洞窟の中に隠された宝物を探すとか?
「その冒険じゃ無いよ、みんなであっちこっち遊びに行くクラブだよ」
「……それってクラブじゃなくてもよくない?」
「そうでもないよ、こう言ったのって気分が大事じゃ無い?」
「そーそー、まぁ危ない所にはいかないけどね、結構楽しいよ」
「話はそこまでだ。さっさとミーティング始めよう」
 羽須美ちゃんや舞加奈ちゃんとの会話に十波君が割って入ると私達はランドセルをおいて席に座った。
「さて、皆さん、これから冒険倶楽部を開始します」
 私はこの時、十波君の目の色が変わった事に気がついた。他のみんなも顔が輝いていてる。
「さてと、今度また冒険をする事になった訳だけど…… みんなの意見を聞かせて欲しい!」
 すると回りの子達はいっせいに手を上げた。
「はいはーい! 浜辺で貝殻探し!」
「いや、また釣り大会! 今度こそ俺が勝つ!」
「ちょっと待って!」
 すると羽須美ちゃんが止めた。
「ほのかちゃん、ほのかちゃんはどこか行きたい場所ってある?」
「えっ?」
「あ、そうか、ほのかちゃん出し抜いちゃダメだよね〜」
「いや、私はこの島に来たばかりだし……」
 それはそうだ。私は休みの日もどこかに出かけたりする訳じゃ無い、いつも家で本を読んだりするくらいだった。
「……だったらあそこなんていいんじゃないかな? あそこだったらこの島全体が見渡せるし」
 すると功治君は言った。そこはこの島の展望台だと言う。私は言った事が無いけど……
「そうだな。この前行ったばかりだけどな」
「私はあそこ大好きよ!」
「よし、じゃあ決定! 今度の目的地は展望台だ」
「えっ、えっとね、十波君……」
 何だか自分達だけで盛り上がってるみたいだった…… 私の事は完全無視?
「そんな訳でほのかさん。今度の土曜日暇かな?」
「えっ?」
 皆一斉に私の顔を見る。嫌なら断ってもいいんだろうけど、折角皆が喜んるのに断ったら私何だか悪者じゃ無い……
「べ、別に大丈夫よ」
 まぁ、確かに暇だしいいか……
「じゃあ決まりだね…… あ、そうそう、この前の写真ができたんだ」
 十波君は立ち上がると後ろにある引き出しの中から写真を取り出して皆に見せた。
「え、見せて見せて!」
 皆は写真を手に取る、そこにはみんなで釣りに行った写真だった。
「港の近くに浜があるだろ? この前そこで釣りをしたんだ」
「この勝負、龍太郎君の勝ちだったんだよね」
「制限時間ギリギリだったけどな」
作品名:冒険倶楽部活動ファイル 作家名:kazuyuki