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蛇の目

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「バブルのときは、県会議員だったんだ、あのジジイ。
えらい羽振りでな。
でもっさ、所詮田舎爺でさあ、金の使い方が分からんかったみたいだな。」
「あ?ほれぃ、アイツのバカ息子、幸造のさ、母親ってのがさぁ
キチガイになってさ。真冬に素っ裸になって、雪の中、駆けてきてさ。
助けてくれ!って、ウチに飛び込んできたよな。
したらさ、そのあと権造が連れ戻しに来てさ。連れてかれちまったっけ。」

「そのあとさぁ、その女房がさ、熊に襲われただか
イノシシに蹴られただか、忘れちまったけどさ、
やっぱり素っ裸でさ、全身の骨が一本残らず、
へし折られて死んでるのが見つかってさぁ。
ありゃぁ折檻されたんだぞ、きっとォ・・」

「ほれとさぁ、幸造の嫁ぇ、ありゃぁ下品な女でなぁ。
幸造ってぇのは、バカなんだ、母親に似たのかしれんが。
幸造の嫁は権造がどっかで囲ってたおんなだって話だな。」

「で、幸造の息子ってえのがさ、また酷いガキでさ。
目付きは悪いわ、態度はでかいわ、
ガキの頃から田んぼのカエルを飲み込んだとか
鶏の生血を飲んだとか、とにかく気色の悪いガキでなぁ。」

「とにかくあのウチはさ、いうなりゃぁ没落貴族だな。
ま、米のヒメゴコロのお陰で経済的には潰れることは無いが、
アソコの人間は気持ちの悪いヤツが多すぎてなぁ、終いだろうよ。」
作品名:蛇の目 作家名:平岩隆