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蛇の目

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バスは駅前のバス亭を出ると、ちょっとした繁華街を抜け、国道に出た。
ここで数人の客が乗り込んだが、住宅街の小学校の前で、降りた。
そこから住宅街を離れ、坂を登ってゆくと川沿いの道に出て、しばらくすると
田園地帯が広がった。
田園地帯を抜けると、山間部に入り、道路は狭くなった。
峠を登りきったところで、時間は2 時間を過ぎていた。

峠のバス亭につくと、運転手は「15 分の休憩になります」と告げ
バス亭前の商店にさっさと歩いていってしまった。
行商のおばあさんも此処で降りた。トイレ休憩を済ませ、商店に行くと
運転手は集落への郵便物を、あるじから受け取っていた。

峠のバス停からは乗客はひとりだけ。峠を降りると、右側は深い谷になり
眼下にかろうじて川が見えた。やがて大きなダムに差し掛かり、そこで停車。
ダム宛の郵便物を下ろして、バスは走り出す。道は更に勾配を増しくねくねと
曲がりダム湖の畔を走る。

幾つかのトンネルを抜けると、いつのまにか更に細くなった道は、まさに
断崖絶壁の縁を走っているようで、深い谷間の底の川は見えなかった。
最後のトンネルを抜けると、そこには谷に架かる大きな鋼鉄製の橋が見え
その橋をバスは渡ってゆく。
この橋が、目的地である旧玄戒村の入り口である。
作品名:蛇の目 作家名:平岩隆