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ふたりの言葉が届く距離

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 第6章



「どう? 気に入ったのはあった?」

 携帯売場にズラリと並んだカラフルなモックアップを真剣な眼差しで見つめていた理奈が、急にこちらを向いた。

「いや……俺にはよく分からないな」
 ちょっと苦笑しながら答えると、彼女は「和樹はこういうのホントに興味無いよね」と微笑む。

 正直言うと、理奈の横顔があまりにも可愛くて、俺は携帯なんか全然見ていなかったんだ。

 俺の持っている携帯は高校入学祝いに買って貰った物で、もう5年以上使っている。
 今でも機能的には問題無いのだが、塗装が剥げて見た目が悪くなっていることを白井に指摘されて、理奈が機種変更することを決めた。
 
 このような買い物は、いつも理奈が完全に主導権を握っている。俺の服とか靴とかを買う時だってそうだ。
 ファッションなどに関して理奈のセンスが優れているかどうかなんて俺には分からない。白井はあまり肯定的ではなかった。
 でも、例えそれが彼女以外の全ての者に否定されたとしても、その反対よりはマシだ。

 楽しそうに携帯を選んでいる彼女の姿を見られただけで、一緒に来て良かったと思う。

「これなんかいいんじゃない?」
 理奈が手に取ったモックを俺に見せる。
 俺はこれまで使っていたものより少し丸みを帯びたデザインの携帯模型を開き、それが置かれていた場所に書かれているスペック表を確認した。
「いいと思うよ」
「じゃあ、これにしようね」
「うん」
 嬉しそうな彼女の顔を見て、俺の心も弾む。
「それじゃあ、和樹はブルーで、私はオレンジ」
「ん? 理奈も機種変するの?」
「うん。お揃いにしようよ」