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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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13

「誠司さん?どうなさいましたの?」
夜、名古屋にて。
鷹島の代表として出席したパーティで声をかけてくるのは最近よく目にする平城のご令嬢。
胸元の大きく開いたドレスに、派手なコサージュ。
ブティックを中心に経営している家だけあって、服装には余念がない。
「すみません、少し考え事を」
「そうですわね、鷹島の若様ともなれば、考えることもいっぱいありますものね」
クスクス、めいっぱい取り繕った笑みで笑う姿にうんざりする。
「最近お父様がよく冗談をおっしゃいますの。わたくしが誠司さんと結婚すればいいのに、なんて。もっとも、その冗談にはわたしくも悪い気はしていないのですけれど・・・」
上目遣いに見上げてくる相手にばれないように、ため息を飲み込む。
「相変わらずお父様は冗談がお上手でいらっしゃいますね。宝石商のところのご子息との縁談のお噂は聞いておりますよ」
そう言うとさっと顔が青くなった。知らないとでも思っていたのだろう。
「そ、それでも・・わたくしは・・・」
「幸せをお祈りしております。失礼」
そういって、その場を去った。

取り繕った笑みなんていらない。
もっと自然な・・・太陽のような・・そう考えて、思い浮かぶのは唯一つの顔。
どんなに着飾って綺麗にしていても、自然の美しさにはかなわない。

「喜田川、そろそろ失礼するぞ」
時間はまだ早いけれど、主賓への挨拶も済んだしこれ以上ここにいても意味がない。
「はい」
車に乗って、伊豆の別邸へ向かった。


「誠司さま」
名前を呼ばれて、はっと気がついた。
「到着いたしました」
窓の外を見ると、見慣れた景色。
「私は寝ていたのか?」
「はい」
「そうか、すまない」
結構な時間車に乗っていたはずなのに、一度も目が覚めなかった。
「ゆっくりお休みになってください、私は車を泊めてから参ります」
「ああ、頼む」
車から降りて、玄関のドアを開けた。
中から、加川の声がする。

『はい・・・どうか、よろしくお願いいたします。差し出がましいことをわかってはいるのですが。・・・そうおっしゃっていただけると。はい、それでは失礼いたします』

玄関先にある電話で加川が話していた。
相手が電話を切る間を充分に撮ってから加川が受話器を置いた。

「誰だ?」
受話器を置いた加川にそう話しかける。
加川が目を見開いて、驚いた表情をしたのを見逃さなかった。
「誠司様、お帰りになってたのですか。気がつかず申し訳ありません」
「いや」
「何か少し食べるものも用意できますがいかがしますか?」
「いや、大丈夫だ。風呂に入って少し仕事をする」
「はい、それでは飲みものの用意をしておきます。あまり無理はなさらないでください」
「ああ、わかってる。喜田川ももう来るはずだから頼む」
「はい」
「さっきの電話は?」
加川の目が泳ぐ。なんと答えて良いか迷う様子。
「仕事の電話か?」
「いえ」
「実家からか?」
「いえ」
その二つでないならば別に内容を問う必要はない。
「それならいい、風呂に入ってくる」
「はい」
内容を報告しないということは加川なりの理由があるのだろう。
加川が今報告すべきではないと思ったのならその判断に任せることとした。
まさかその電話の相手が、あいつだなんて思っていなかったから。