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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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14

その翌日の夜更け。
携帯が鳴ったのは突然だった。
着信表示を見て、目を疑う。
この2週間少し、かけ続けてもつながらなかった相手の名前がそこには表示されていた。
最初に感じたのはやっと連絡がつくという安心感。
次に感じたのは、なぜ今頃になって連絡が来たのかという疑問。
その次には空流の身に何かあったのではないかという不安が押し寄せる。
通話ボタンを急いで押す。
「もしもし?」
『誠司?俺だけど』
「何かあったのか!?」
『突然の連絡で驚かせたのは悪かったけど、お前が心配しそうなことは何もない。話がある。明日の夜は暇か?』
「暇じゃなくても空ける。話の内容は?」
ほとんど確信はあるけれど、一応の確認。
『お前が知りたいこと』
それなら、一刻も早くに知りたい。
「なんで明日まで待たないといけない?今じゃだめなのか?」
『職業がら、電話ってものは信用できなくてね。やっぱり顔を見ながら話さないとなかなか本音はわからないだろ?』
俊弥がそういうのもわからなくはない。けれど・・・
「この2週間少しの着信の量を見ればどれだけ本気なのかくらいわかるだろ?」
『お前の本気は十分わかってる、それでも今、簡単に居場所を教えるってことはできない』
「なぜ?」
『空流君の思いを、電話では伝えきれないと思うから』
「空流に会ったのか?」
『俺は今空流くんと同じ場所にいる。ただしもう空流君は寝た後だけどな』
空流と話をしたのか・・・。それなら、その思いを電話で聞くのは重すぎる。
「・・・・わかった、明日はどこに行けば良い?」
『まだ伊豆にいるんだろ?それなら夜に御殿場か小田原あたりまで出てこれるか?』
「ああ、こっちの近場でいいのか?」
『ついでだしな。別にお前のとこまで行っても良いけど明後日は仕事だから東京に帰らないといけない』
「じゃあ早めの方がいいか、何時にこれる?」
『お前の仕事が終わる時間に』
「何時でも時間を空ける」
そう言うと、俊弥がため息をついた。
『・・・わかってないな、お前のそういうところがだめなんだってまだわからないのか?』
「え?」
『なんでもない、それじゃあ夜の7時に小田原で。場所はあとでメール送っとく。今日くらい早く寝ろよ、加川さんにも心配を掛けすぎた』

それだけいって、電話が切れた。

受話器を置くと、なぜこのタイミングで俊弥が電話をかけてきたのかが、やっとわかった。

――――加川さんにも心配をかけすぎた

その言葉が耳に痛い。
昨日、帰ってきたときの加川の電話を思い出す。
あの相手はおそらく俊弥だったのだ。
ここ最近の荒れた生活を見かねた加川が俊弥へ連絡をとったのだろう。
思ってみれば、最近あまり眠っていないしろくに食事をした記憶もない。
今日くらい早く寝ろよ、と俊弥に言われるのももっともだ。
ここ最近は眠ろうにも眠れなかった。

俊弥の保護のもとならば心配ないと思う気持ちはある。
もしこれが俊弥の協力を得ない空流一人の行方不明だったらと思うと、ぞっとする。
そういう意味ではまだましだったとは思う。
けれども、もし何か間違いがあったら・・・?
そう思うと気が気ではなく、夜も眠れなかった。

ここ最近の深夜は、俊弥と関係があり住み込みで働けそうな施設をすべて確認する作業。
療養施設や仲原の家とつながりがある旅館をリストアップさせ、一つ一つをみていくのも今日で終わり。
資料をまとめ、ファイルへと入れると、少しだけのつもりでベッドへと倒れた。

少しだけのつもりが気がついたのは朝。
蝉の鳴き声と、鳥のさえずる声。
それから加川のノックの音で起こされた。