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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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12

時間はだいぶ戻ることとなり・・・
伊豆の鷹島の別邸。

最後の俊弥との電話はもはや二週間前。
一方的に切られて、電話の電子音が延々と頭に響いてきた。

『全部お前のせいだよ、誠司』

その言葉が頭から離れない。
それ以来、いくら電話をしても相手は電話に出ない。

俊弥に頼らずとも連日必死に探しているけれども、結果は芳しくはない。

「誠司さま」
その声とともに、加川が部屋の扉をたたく。
伊豆で過ごすのも、あとわずか。
そのわずかな期間が終り次第、東京へと帰らなければならない。
そうなれば自由になる時間も格段に少なくなってしまう。そうなると探すことも難しくなっていくだろう。

「そろそろご朝食を」
再び加川の声がドアの外から聞こえてきた。
「ああ、わかってる」
ほとんど眠っていない重いからだを動かして、部屋の扉を開けた。
「おはようございます、誠司さま」
「ああ、おはよう」
そのまま黙って二人で食堂へ。
食堂には一人分の食事が整えられている。

あの日から、この家全体に漂う空気が違う。
いつもどおりの生活をしていても、何かが足りない。
それは加川も感じてはいるだろうけれど、互いに口には出さないことが暗黙の了解となっていた。

黙々と朝食を平らげ、準備を整えると同時に呼び鈴が鳴らされた。
加川がドアをあけて、喜田川を迎える。
「おはようございます、誠司様」
「ああ、おはよう」
靴を履いて、玄関を出て、車に乗り込む。
「いってらっしゃいませ」
「いってくる」
加川の見送りを受けて、車が走り出した。

必要な書類に眼を通しながら現場のリゾートホテルへと向かう。

「誠司様」
突然声をかけられて驚く。
「ついたのか?」
顔をあげて、外を見るけれどもそこはどう見てもまだ道中。
「いえ」
「何だ?」
そう聞くと、少しためらった後に喜田川が言った。
「私をお責めにならないのですね」
「なんだって?」
意味を飲み込めずに、聞きかえす。
「まだ、見つからないのでは?」
「・・・そのことか」
やっと理解ができた。
空流が消えたことを喜田川がどう思っているのかはわからない。
「なんで私が喜田川を責める必要があるんだ?」
「なぜも何もほとんど私のせいでしょう」
あのときの喜田川との会話が引き金となったことは確実。
喜田川なりに責任を感じているのかもしれない。
けれども、これが喜田川の望んだ結論ではないか。
「反省している相手を責めるのは時間の無駄だし、反省していない相手を責めるのは労力の無駄だ。そんなことをするよりも、もっとたくさんすることはある」
責めはしないけれど、喜田川との関係が少し硬化したことは確かな事実だった。
喜田川が自分のことを思ってくれているというのはよくわかる。
冷静に考えればあのときの言葉だって憎まれ役を買って出てくれたものだという事もわかるけれど。
それでも、自分の感情が抑えられないことがある。

喜田川との会話は終わり、目的地へと到着するまでお互いに一度も口を開かなかった。