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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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千晴さんの話が終るころにはすっかり夜も更けていた。
結局俊弥さんは泊まっていくことになって、千晴さんと朱音さんは先に部屋に引き取った。

俊弥さんと二人でその場に残される。

「ちゃんとやれてるみたいで、良かったよ」
「はい、本当にいい人たちです。たまに、両親がいたらこんな感じなのかな、なんて思います」
「そっか、良かったね」
笑顔でそう言って、黙ってしまった。
何も言うべき言葉が見つからなくて、沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは俊弥さんのほう。

「空流くん、何か俺にききたいことはある?」

水を向けられてる。
どうしようもなく気になること、それを聞いてもいいって言ってくれてる。

「いっぱいあります・・・でも聞けません」
「どうして?」
「たぶん、聞けば会いたくなってしまうから・・・です」

「そう、じゃあ、ここから先は俺の勝手な一人ごとだから聞きたくなかったら出て行ってもいいよ」
「え?」
俊弥さんが話を始めた。

「東京にね、とっても大きい会社があるんだ。マンションとかホテルとか色んなものを経営しているグループなんだけど、そこの総裁がやり手でね。そのまた息子もまたやり手なんだよ。仕事はできるしルックスはいいしで、条件の良すぎる見合い話が向こうから群がってくるくらいなんだ、まあ本人はそんなのに見向きもしてないんだけどさ」

俊弥さんは独り言っていったけど、もしかしてこれって・・・?

「なんで見向きもしないかわかる?仕事もそうだけど今はそれどころじゃないみたいでね、以前から仕事は鬼のようにできたけど、最近それが倍になった感じかな。仕事をやる集中力が尋常じゃなくて片付けるスピードは倍近い、でも精度は落ちないときたもんだから大したもんだ。そしていつもよりも早めの帰宅をする。なぜなら彼にはやらなければいけないことがあるから」

間違いない、これは・・・。

「俊弥さん、やめてください!」
聞けば、会いたくなってしまう。

違う、会いたくなってしまうんじゃない。

今だって、会いたくて仕方がない。
でも、その気持ちを必死に抑えて頑張っているのに。
そんな話をされたら、抑えきれなくなってしまう。

「だから、これは俺の独り言だってば。聞きたくなかったら外に出ていいんだよ」

俊弥さんが話を続けようとするのを見て、席を立った。
ドアへと歩く。
表情まではわからなかったけれど俊弥さんはずっとこっちをみてた。
部屋の外に出てドアを閉める。
そこからしばらく動けなかった。

そして、部屋の中から声が聞こえた。

『そいつはね、今、必死に探しモノをしてるんだよ。見つかる可能性の薄い探しモノをね。朝から夜まで仕事。そして深夜は探しモノ。寝てる時間なんてほとんどない。いつ倒れるんじゃないかって周りはみんなハラハラしてる』

ほとんど寝てない・・・?
あんなに忙しく仕事をしているのに、ほとんど寝てないなんて。
そんな生活、本当にいつ倒れてもおかしくない。

『あいつの探しモノの場所をしっているのは俺だけ。でも俺は決してその場所を教えない。なぜならそれはあいつの探しモノ自身との約束だから。探しモノっていうのは、とある人のことなんだけど』

探し物って言うのは…まさか・・・。

『さすがに俺も心配になってね。ここにはその探され人に言いに来たんだ。よければ少しだけでも顔を見せてやってくれないかって。働くのはそれからでもいいんじゃないかって。すぐに返事をもらおうとは思ってないけど…あいつが過労で倒れる前に決断してほしい、なんて卑怯な頼みかたかな?……空流くん』

俊弥さんは僕がドアの外にいる事を確実にわかってた。