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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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22

おととい一回、昨日が二回、今日のお昼に一回。
全四回の仲原先生との面接は今日で終わって、仲原先生を誠司さんが駅まで送っていった。
すぐに戻るといって、二人で出て行った。

それでもこんなのは口実でふたりでいろいろ話したいことがあるのかもしれない。
何を話してるんだろう・・・僕のことは話題に上るのかな?
そうだとしたら、何を言われてるんだろう・・・?嫌なことじゃないといい・・・。

声は依然と治らないまま。
それでもすぐに治るからといって仲原先生は帰っていった。
そして、誠司には内緒だから、といってくれた名刺。
仲原先生の病院のものじゃなくて個人のものだった。携帯電話の番号とメールアドレスまで書いてある。

『何かあったらいつでも連絡してきてね。君にはしたいと思ったことをする権利があるから。なんなら働き口も紹介するしね』

そう言われて、最後の面接は終了した。
働き口、か・・・。怪我が治ったら現実を考え始めないといけない。
ここで安穏とした生活を送っているのなんて、泡沫の夢にすぎないんだから。

それでも、怪我が治るまでは・・・夢にひたっていたい。
誠司さんといるときは、いやなことも全部忘れられる気がするから。

それでも、時間はいつも横を通り過ぎて、未来は確実に迫ってくる。

足の怪我が治るまで、あとどのくらいかかるだろう。
ほとんど擦り傷だから一週間もあれば歩けるようになるんだろうか・・・。
それとも2週間くらいはかかる・・・?
どっちでもそんなに変わらないか。

部屋をノックする音がして、ドアが開いた。
「空流?」
誠司さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
口が動いてるだけだけど、そういった。
「ただいま帰りました」
そういったあと、すぐに言葉が続くだろうと思ったのに何も続かなかった。
名前を呼ばれたから、何か用があるのかと思ったのに。
何かいいにくそうにしてから、結局こういった。
「夕飯ができたみたいなので呼びにきました」
って。
それでも、誠司さんは何か言おうとしたんじゃないだろうかって思う。
言いにくいことがあったんだろうか。
もしかしたら、仲原先生に何か言われて・・・?

でも仲原先生は、僕が言ったことは誠司さんには言わないって約束してくれた。

どうして・・・?
なんでだろう・・・?

「空流?行きますよ」

食堂へ行って、夕飯を食べてても不安は消えなくて、誠司さんがたくさん勧めてくれるのにあまり食べられなかった。

「後で話があります」
夕飯を食べ終わると誠司さんがそう言って、席を立った。
帰ってきたときから様子が変だったのは、もしかしてそれのせい?
いいにくいことなのかな・・・。

夕飯が終わって、部屋へ戻った後も誠司さんがいつ来るかとドキドキしっぱなしだった。
部屋のノックが鳴ったのは、それからすぐ。

「空流、少しいいですか?」

誠司さんが部屋に入ってきて、二人でベッドに座った。
「少し、話をしましょう」
そういう風に前置きをするってことは、きっと僕にとっていい話じゃない・・・。
一ノ宮へ返される?
それともどっかの施設?
誠司さんと離される?

やっと、わかってくれる人が見つかったのに・・・。
泡沫の夢でも、もう少し、見ていたかった・・・。

だから、少しだけ許して欲しい。
ささいな、抵抗を。

誠司さんが話を始める前に、きりだした。
誠司さんの袖を掴んで、言った。
「離れたく、ないです・・・」
こんなに強く何かを望んだことはなかった。
いつもいつも、我慢してきた。
だけど、今は本当に望むから。
誠司さんと、離れたくない。

だから・・・

どうか、神様がいるなら・・・

叶えて・・・