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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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21

「俊弥、飲まないか?」
「ああ、いいよ」
夜に、酒を持って客間へ。
この間取引先から送られてきたワイン。
色を見るだけでも上等なものだとわかる

もちろん空流はもう眠った時間。

「空流はなんて言ってた?」

もう少し酒が進んでから聞こうと思っていたのに、気になって仕方がなかった質問がつい口をついて出てきてしまった。

「お前も意地の悪いことするな。酒飲ませてしゃべらそうなんて」
「別にそんなつもりじゃない」
「酒飲んでクライアントの秘密を喋っちゃいました、なんて俺らの世界じゃ大犯罪だぞ」
「わかってる」
「それでもあえて聞く、か」

本当に意地の悪いのは俊弥のほうだ。そんなことを言ってくるなんて。

「なあ、誠司、空流くんってお前にとって何なわけ?」

聞かれて、答えが出てこなかった。

最初は興味の対象。
どうしようもなく惹かれて、それがなぜだか「わからない」という感覚を味わったことに対しての。

今はなんだ?
今でも空流をどこかへやることなど考えられない。
近くにいてほしいと思っている・・・?
なぜ・・・?

怪我がほうっておけない?
行く場所がないから?
一ノ宮にしばらく預かる約束したから?

そんな消極的な理由じゃない。
私自身が確かに空流に傍にいて欲しいと思っている。

「そんなに考え込むなよ。わからないんだろ?そういう時は素直にそう言え」

そうか、まだわからない・・わかってないのか、自分でも。

「お前さ、仕事いつから?」
「今週いっぱいは休みをとってある。」
「ってことは、明後日までか」
「そうだな」
「東京に帰るのか?」
「いや、しばらくはこっちにいる」

「たぶん空流くんの声はすぐ直るだろうし、足の怪我もあと1週間くらいで歩けるようになる。それからどうするかちゃんと考えろ。空流くんの怪我が直ればお前が彼を保護する理由は何もない」

・・・何もない。
一ノ宮から連絡が来ればそれでおしまい・・・家庭裁判所を通したとしても空流は私のところいにはいられない。

「ただし、空流くんが望めばまた別の話だけどな。いずれケジメをつけるときが来る。それまでにどうするかちゃんと話し合っておくんだな」
もっとも今のお前のままじゃ無理だろうけど、と付け加えられた。

「俊弥、お前からみたらどうだ?」
「何が?」
「私が空流をどう思ってるように見える?」
「・・・難しい質問だな」
「ああ、答えの予測がつかなくて怖いよ」

「そうだなあ・・・今はまだ同情と守護だな。自分とは別の意味でかわいそうな子ども時代をすごした空流くん。ひどい怪我を追っているし心にも強いショックを受けている、守ってあげなきゃ、ってところか」
「今はまだ?」
「ああ・・・きっとそのうち変わってくる。もともと同情なんて長続きしないもんなんだよ」
「・・・そうかもな」
「同情がさめたとき、それがどういう感情に変わるかはお前次第。そしてお前の気持ち次第で空流くんがどうするか、どうなるかも決まるだろうな」
「すごいプレッシャーだな」
「それだけの責任がお前にあるんだよ。誠司が空流くんをどう思ってるのかをちゃんと本人に伝えろ。お前からどう見られるかを気にしていつも気を使っているのがわかるだろ?」

確かに、それは思い当たる節がたくさんある。

「人間、一番気になるのは人から自分がどう見られてるかってことなんだよ。とりあえず空流くんとちゃんと話してみるんだな」
「ああ・・・そうだな、やってみる」