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大人のための異文童話集1

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ボクは口を塞いでコトバを捨てることにした。

キミがまた何かを言おうとしている。
ボクは耳を塞いで何も聞こえなくなった。

キミが一歩前に踏み出して来た。
ボクは目を塞いで闇だけを手に入れることにした。

そんなボクの姿を見て、キミは何をすることも諦めた。

見ることを期待しないで、話されたことは無視して、言葉に希望は託さない。
見ざる、聞かざる、言わざるなのね。
もう一度、この空缶を蹴るといいわよ。

そう言ってキミは、手にした空缶をボクの足下に置いて歩き始めた。

せっかくキミは、ボクの足下に空缶を置いてくれたのだろうけど…
ボクにはもうその空缶が、どこにあるのかが分からなかった。
それに気付いた時、ボクの姿は見る見るうちに猿になっていた。

どこからともなく声が聞こえた。

お前は自ら大切なものを捨ててしまったのですね。
そんなお前には今のその猿の姿がお似合いでしょう…と。