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Gothic Clover #02

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 現在、9時50分頃。
 ボクは授業を受けていた。
 更橋先生(「さらはし」と読む。体育の教師でもないのに常に青ジャージ。逆毛な茶髪のナイスガイ。授業中だろうが会議中だろうがいつもタバコを吸っている。)の歴史の授業は退屈ではないが、生徒にあまり注意をしない先生なので完璧に生徒になめられている。授業中に最も私語が多い科目だ。

「だからさ……」「次、水泳?」「誰か10円持ってる?」「3組の房田って奴……」「やべ、水着忘れた」「地理のレポート……」「静かに……」「次4巻貸して」「マガジン持ってる?」
「ほらヨ」
「さんきゅ」

 ボクは隣の珠世灘澄(「たませ なだすみ」と読む。金髪パンクの若きハッカー。)にマガジンを貸してやった。どうやら昨日、「March hare」に財布を忘れてしまったらしく、掻太からわざわざお金を借りて買ったモノだ。(掻太に借りを作ってしまった。なんか悔しい。)
 そしてとりあえず黒板の内容をノートにとる。
 さて、区切りがついたトコロでボクは思考を開始する。
 授業は雑談に入った(内容は「最近のパソコンゲームとその内容の政治への影響力について」)。しばらくは大丈夫だ。
 さて、ボクが今巻き込まれているこの事件。ボクが現時点に情報として得ているモノは以下の通り。
 被害者は男女5人。
 それぞれ体の一部が調理されている。現場は神奈川の東部を中心に点在していて、山舵第3公園の現場には喫茶店「March hare」のロゴが入ったフォークがある。
 …………。
 ま、こんなトコロか。
 考えてみれば、随分と少ない証拠だ。
 そういえば、料理も関係しているかもしれない。
 えーっと確か、レバーのフォアグラ。腿肉のソテー。バラ肉のステーキ。ひき肉のソーセージ、あと、脳髄のシチュー、か。
 もしかして、メニューが何かの暗号になってるとか?
 いや、その可能性は低いか。まず、犯人が暗号を示す必要性がわからん。どこぞのB級推理小説じゃあるまいし。
 ふむ。
 どうしたものか。

「次、首廻。42ページから」

 いつの間にか授業に戻っていたらしい。
 ボクは教科書を読む。
 しかし、事件についての思考を続けたままで読んでいるので、文を読むというより文字を発音する、といった感じだ。

「…………によって酸化するのでアル」
「……首廻?」

 先生が何故かクエスチョンマークを語尾につけてボクの名前を呼んだ。
 …………?
 何か変なコトでもしただろうか?

「……捩斬クン?」

 ボクから見て前の席の見七美那(「みなな みな」と読む。制服をロリータ風に改造している帰国子女。)がボクの方を困った顔で見た。

「今ね、歴史の授業だったりしちゃうんだけど……捩斬クン今、化学の教科書読んじゃったでしょ?だから……」

 あー、ハイハイ。
 ナルホドね。
 そういうコトか。

「えーっト……失礼しまシタ」
「あー、10秒以内に教科書を準備しろ」
「マジっすカ?」

 10秒以内……微妙だ。
 えーっと確か、机の中に……あれ?無いぞ。あ、そういえばさっきロッカーに入れたんだ。今からロッカーに行くワケにはいかないし……。

「捩斬!」

 声をした方を見れば、ボクから右に二つ先の席の夕暮血染(「ゆうぐれ ちそめ」と読む。銃刀法に喧嘩売ってるような刀を常に持ってるギタリスト)が、ボクに向けて教科書を差し出していた。
 それを隣の席の掻太が受け取り、ボクに渡してくれる。。
 どうやら夕暮はボクの危機を感じて教科書を貸してくれたようだ。
 ありがたい。ボクは早速言われたページを開いて目を通す。

「彼女は言った。『私はもうすぐ死ぬのよ。』と。その言葉は僕に衝撃を……」
「首廻」
「……ハイ?」

 ボクはまた何か変なコトをしてしまったのだろうか?

「何すカ?」
「それは国語の教科書だ」
「…………」

 夕暮を見る。

「……っ!!」

 必死に首を横に振ってる。どうやら夕暮がミスをしたわけではないようだ。
 なら……。

「…………くくっ……くっ……」

 ああ、中継点が犯人だったか。
 あとでどうしてくれようか。

++++++++++

 13時22分
 夏まっさかりのプールサイド。
 暑い。
 暑すぎる。

「暑すぎるんだヨォォォォ!! ……ォォォ……ォォ……」

 ちょっとエコー。
 ボク達は体育(しかも水泳)の授業を受けていた。
 ボクの目の前にはピチピチした水着を装着した男子が群れている。(これだけで既にある意味芸術作品。)
 中にはジャングルが群生認可区域からはみ出しているヤツもいるので困る。
 ムサ苦しい。
 ま、そりゃ当然か。
 水泳は男女別に分けられて行われるのだ。なので当然、時間割や場所は同じだが、授業担当は別だ。
 結果、プールの授業はオアシス(女子)がいない地獄のような授業となってしまったのだ。
 それにしても……

「暑イ……」

 ボクはイライラした口調で呟いた。

「そんなに暑けりゃプール入ればいいじゃん」

 掻太がはがれかけた絆創膏を(原因:ボクによるシャーマンスープレックス)張り直しながら言った。
 さっきあれだけ絞ってやったのに、まだ体力があるようだ。この隆々とした筋肉は伊達ではないというコトだな。
 いや、関係ないか。

「見学なんてつまんねぇだろ」
「まー、そうだけどサ……」

 でもボクはプールに入る気にはなれなかった。
 何が悲しくてあんなピチピチしてる上に体(というか股間)のラインが出るパンツをはかなければいけないんだ?
 というワケで、現在見学中。
 ボクは向こうのプールサイドを見た。向こうでは女子が水泳の授業を受けている。あ、人飼だ。

「何見てんだ?」
「別に何も見てないヨ」

 ボクはなるべく普通に答えた。

「あー、ハイハイ。女子の方見てたのね」
「見てないヨ」
「意地張るなって」
「張ってナイ」
「いいよなぁ。やっぱ女の水着ってのは」
「スク水萌えデスカ?」
「きぇーー!」

 殴られた。

「俺は紐パン派だ!!」

 大声で言うな。

「おらそこーッ! 何やってんだーッ!!」
「お呼びダヨ」
「やっべ!」

 掻太は慌てて走っていった。
 先生に怒られている。
 あ、プールに突き落とされた。まぁ、掻太なら大丈夫だろう。
 ボクはふと、女子グループの方を見た。
 人飼と目が合った。

「…………」
「…………」

 えーっと……どうしよう。
 なんか気まずい。
 困ったな。
 目を離すにもタイミングを逃してしまった。
 でもいつまでもこの状態を保つワケにはいかないし……。

「    」

 人飼が何か言った。
 いや、何かを言ったが、発音したワケではない。ただ、口を動かして「あとで」と言ったのだ。
 なんだろう? あとで話があるというコトだろうか?
 そうこう考えているうちに、人飼はプールに入ってしまった。ボクは目を逸らし、プールの水面を見つめる。
 水面には、セミの抜け殻が虚しく浮いていた。

++++++++++

 ボクはプールの授業が終わった後、みんなが教室で着替えている間、廊下で壁によりかかっていた。
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる