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Gothic Clover #02

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 もちろん、人飼を待つためである。
 しばらく待つと、人飼が来た。多分、みんなより早めに着替えたのだろう。
 人飼は来るなりポケットに手を突っ込んで、何かを取り出した。

「捩斬クン、コレなんだけど……」

 人飼がポケットから取り出したのは、一枚の写真だった。
 写っているのは、ボクと掻太と、……罰浩だ。
 これは確か、いつもはボクの財布に入っているハズのものだ。

「ごめんなさい……。捩斬クンが喫茶店に財布忘れた時に私気付いて渡そうと思ったんだけど、その時に、その、気になっちゃって、中身……見ちゃって……渡すにも渡せなくて……」

 そう言いながら人飼は、別のポケットからボクの財布を取り出した。
 ああ、そういうコトか。

「本当に、ごめん」
「……別に気にして無いヨ」

 ボクは人飼の手から写真と財布を受け取ろうとした、が

「ちょっと待って」

 手を引っ込められた。

「……なんダヨ」
「この人誰?」

 人飼が指をさしたのは案の定、写真の中の罰浩だった。

「クラスメイトダヨ、クラスメイト。たまたま同じクラスになった人間であり、ただの知り合いでしか無イ」
「掻太クンから聞いた話とはかなりかけ離れているね」

 掻太の野郎……。
 他人のプライベートを勝手に喋りやがった。
 あとでもう一回しばく必要があるらしい。

「この場合は掻太クンの言った方が真実なのかな?」
「…………」
「そうなんだ……」
「…………」
「じゃあ返す」
「ん、アア」
「……ごめんね」
「ア?」
「勝手に大切な物見ちゃって」
「あー、イイヨ。気にしないデ」
「ごめん」
「いいっテバ」

 ボクは人飼から財布と写真を受け取り、写真を財布の中に入れてズボンのポケットにしまった。

「死んじゃったんでしょ? この罰浩って人」
「正確には『殺された』と言った方が真実に近イ」
「犯人は?」
「まだ捕まってナイ」
「……そう」

 人飼はそう言ったきり、黙ってしまった。
 だんだんと人が増えてきた。
 水着をしまい、ロッカーから次の科目の教科書を出しはじめている。
 ボクは「それジャ」とだけ言って、教室に入った。
 次の科目はなんだろう?
 あー、家庭科か。
 そういえば、瀬水傍嶺はどうなったのだろう? 確か、今は行方不明というコトになっているハズだ。やはり警察が来る前に気が付いて逃げたのだろう。
 ……会いたいな。
 会ってみて、今度はお互いに落ち着いた状態で聞いてみたい。「お前は、殺人者としての自分をどう思っているのカ?」と。
 少しだけ、そう思った。

++++++++++

「つまり犯人の職業はコックか何かだと思うんだよ」
「屍体が料理されているから? それは偏見だと思う」
「あ?なんでだよ」
「じゃあ、屍体が化粧されていたら犯人はメイクアップアーティスト? 屍体に漫画が描かれていたら犯人は漫画家?」
「それにはボクも同意ダ。料理をするコトぐらい誰にでもでキル」
「むぅ……」
「…………」
「…………」
「『生ハムとバジルのピッツァ』おまちー」
「待ってましたぁ!!」

 ボク達はまた「March hare」に来ていた。
 詩波さんが運んで来たピッツァ(ピザって言うと詩波さんはマジ切れする。)をパクつきながら話を進める。

「はっきり言って捩斬さぁ……」
「ン?」
「どうなの?今回の事件」
「……はっきり言えば、情報が少な過ぎル」
「あ〜くそっ。致命傷じゃんそれ」
「決定的なんダヨ」
「どっちにしろ、事件の解決は難しいということは明らかね」
「うーん」

 本当にわからない。
 解決が遠い。
 それどころか、次のステップに進むコトさえ出来ない。
 …………。
 いや、
 いやいやいやいやいや、
 何をボクはしているんだ?
 犯人なんかどうでもいいじゃないか。
 ボクはただ、異常な状態の屍体が見れたらそれでいいんだ。
 それでいいハズなんだ!!
 ボクにとって犯人だって誰だろうがどうでもいいコトなんだ!!
 ……そう言いながら中学時代、事件解きまくったんだよなぁ。ボクと、掻太と、罰浩で。
 なんかボク、流されてばかりのような気がする。
 感情はいらない。ただ法に従え、ってか? まるで道化だ。
 ボクはピザをかじった。
 あー、罰浩に会いたい。
 ボクは現実を捨てて無害な方に思考を巡らせる。
 罰浩に会ってまた下らないなんの得にもならない会話を心行くまでしたい。
 あー、なんで罰浩死んじゃったかなぁ。

「捩斬?」

 罰浩イイ奴だったなぁ。

「おーい?」
「これがもし恋愛感情だったトしたらキモいよナァ」
「え? なんの話?」
「いや、なんでもナイ」
「? まぁとにかく食べろよ」
「食べてるヨ」
「あっそう」

 ボクは残りのピッツァを口に放り込んだ。

カラン

 ドアのベルが鳴った。誰だ? と思った後に、この店の常連メンバーを思い出す。

「なんだ、来てんのかお前ら」

 坂造さんと狭史さんだ。

「ういっス」

 ボクは軽く頭を下げた。

「またここで夕食か?」
「まーそうデスネ」

 適当に答える。

「こちらがコロッケカレーですよー、ってはーくんとおっちゃんじゃん。なんか食べる?」
「あー、じゃあカルボナーラ」
「俺ペペロンチーノ」

 そう言いながら狭史さんはボクの後ろのテーブルのイスに座った。坂造さんも同じくそのテーブルの別のイスに腰をかける。

「ういー」

 詩波さんはボク達の分のコロッケカレーとハンバーグ(スープとライス付き)と海藻サラダを置いて「おっ冷♪、おっ冷♪」と言いながらキッチンの方に引っ込んで行った。
 ボクは早速コロッケカレーにありついた。その時、ボクの座っているイスの横にファイルが落ちているのに気付いた。坂造さんのものだろうか?
 ボクは黙ってファイルを拾った。

「捩斬クン?」
「シーッ」

 坂造さんと狭史さんはまだ気付いていない。ボクは音をたてないようにファイルを開けた。
 中に入っていたのは様々な事件の資料と、現場の写真だった。
 ボクはこの中から死体が調理されてる事件のものを探す。
 ファイルの中でさらに細かく区分けされてる。坂造さん、意外とマメな性格のようだ。
 ええと、これじゃなくて、これでもなくて……人喰倶楽部に関する資料? なんだこりゃ。面白い名前だな。他にもあるぞこれは……

「おい、早くしろって。つーか貸せ」

 掻太にファイルを取られた。
 彼はパラパラとファイルを素早く捲り、目的の事件の資料を見つけ出す。
 お、見つけたらしい。これが死体調理殺人事件の資料と写真か。

「……」

 ボク達は無言で、その写真を運ばれてきたメニューを食べながら見る。
 写真には影なく綺麗に屍体が写っていた。

「……すげぇ」

 掻太が感嘆の声をもらした。確かにそれはすごい光景だった。
 飛び散った血。飛び散った内臓。大胆に残された凶器達。光る刃物。錆びた鉄。原形がわからなくなる程に解体された屍体。
 そして、ただのオマケのように屍体の傍らに置いてあるスープ皿。中身は白い液体…………脳髄のシチューか。

「よくここまで解体できたわね」
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる