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ふるさと

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Act 3 中央分離帯

 故郷とはいうものの、ここには父も母もいない。
 それどころか、姉も、兄も、飼っていた犬さえも、ここにはいないのだ。

 グラウンドの端まで歩いてきた。
 そこは十字路になっていて、丁度道路が交差する真ん中には、暗くなると赤く点灯する警告灯が埋まっている。
 上部に太陽電池以外のものを決して連想させない黒っぽいタイルのようなものがあり、日中に充電して一晩の活力を得ているのだろう。
 それはまさしく科学的な光合成だ。
 中学生の頃、家に遊びにきた友人がそれを見て、UFOかと思った、と言った。
 衛星軌道上の宇宙船への転送装置なんだよ、と笑ったものだ。
 真夜中に、それの上に乗っている人影を見たこともある。

 私から見て十字路を左へ行く道―丁度、南側―の先には、大学が丸々一つ入りそうな田園が広がっている。
 私が小学生の頃、そこには中学校ができると噂になった。
 第一期生になれるのかとドキドキしたものだった。
 結局そこには何も建設されず、田園はそこに在るまま現在に至っているのだが、私が中学生の頃には、そこに高校ができると噂になったし、高校生の頃には、何らかの専門学校ができるとの噂を聞いた。

 私から見て十字路を直進する道―丁度、西側―の先には、さらに先へと続く道が伸びている。
 その道は、途中から北側へ曲がる登り坂になっていて、あの坂を登った先には何があるのかと幼い好奇心を呼び起こしたものだ。
 子供の頃の知らないことへの好奇心は凄まじいものがあった。
 遠くへ行ってはいけないと言われれば言われるほど、どうしても行きたくなる。
 大人達は僕達に何かを隠している。
 そんな気持ちをいつも持っていた。

 私は十字路を右へ曲がった。
 北へ向かうその道は、小学校のグラウンドに面したまま続いている。
 そして、その先には交差点がある。交差点と十字路の違いは信号機の有無だ。点滅信号があるところも交差点ということになる。
 あくまでも、それは私個人の分類だ。
 四つ角という言い方もあるが、それには他に含むものがあり、あまり望ましい表現ではない。部落差別がどうとかいう話を耳にした記憶がある。特にそのためという訳ではないが、四つ(よつ)という言葉があまり好きではない。
 その交差点の先には、市営団地が群立している。
作品名:ふるさと 作家名:村崎右近