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I hate a HERO!!

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しかし、運命はどこまでも俺に残酷らしく、学校についても大体はヒーローの話で持ちきり。
俺の心に休息は訪れない。
男子は強く逞しいヒーローに憧れ、女子は美形揃いのヒーロー・ヒロインの話に花を咲かせている。
「(おかしい…絶対に世界は間違ってる……)」
そんな事を思いながらげっそりとしながら窓際の自分の席でふせった。
前の席でこちらに椅子を向けて座る恵登はそんな俺を見て苦笑していた。

「歴代最高って言ったらやっぱりサイレントだろ!」

どっかの男子がいった言葉に一気にサァと顔の血の気が引いて行く思いだった。

“悪を黙らす静寂ヒーロー静真・静花”

通称サイレント。
俺達が生まれる少し前までヒーロー界で活躍していたヒーローヒロインで、一切言葉を発することのないことで有名になり、その美麗な風体と鮮やかにヒールや犯罪者をひっとらえていく姿に、リアルタイムで見たことのない世代にまで人気をいまだに誇っていて、今は引退し、保護プログラムによってその後の消息は隠されている。
さて、なぜここで俺の顔の血の気が一気に急低下るのか。
その答えは至って簡単なものだ。
「あいかわらず将文さんも久美子さんも人気だよなー」
ポツリ、と俺にしか聞こえない程度に恵登が漏らす。
そう、もう察しも付くかもしれないが、歴代人気現在進行形のトップヒーローたちは確実に家の両親である。
「一言も話さないってところがいいのよね!クールえかっこよくて」
家ではどうでもいいことペラペラ話してるよ。
「静真さんって寡黙で「俺に任せておけ」みたいな男らしさがいいのよねぇ」
実際はほわほわしたタンポポの綿毛みたいな人だよ。
「静花様のあのプロポーション!黙って敵を鮮やかに倒すあの姿っスタイルは抜群なのに笑うと儚げなところもまた良し!」
あの人なら隕石に直撃しても生きていけるよ。笑顔は儚げじゃなくて腹黒いの間違いだ。
「……胃が痛ぇ…」
「大丈夫かー」
伏せる俺の背中を恵登が宥めるように誘った。
「まあ、落ち着け」
そう笑う美少年は花がある。本当に俺の親友でいいのだろうか…。いや、実際恵登の存在に助けられてる部分は多いが…。
「恵登…俺に気を使って側にいなくても話に混ざってきてもいいんだぞ?」
「ん?ああ…変な気を使うな。俺は親友との緩やかな時間を大切にしてるからいーの」
そう言って笑う。この親友に俺は本当に感謝してもしきれない。
本来なら“こっち側”に関する人間ではないのに俺の友達であるが故に“あちら側”から“こちら側に”引き込んできてしまった節もあるし…。
「俺、お前が親友で良かったよ」
色々と考えていたらそんな結論に至った。
「奇遇だな。俺もだ」
恵登はその秀麗な顔で笑った。

作品名:I hate a HERO!! 作家名:727