I hate a HERO!!
正義の味方が悪党の助けとなるために生まれた。
それは何て奇怪な響きだ。そう思えるが、実際の話、ヒーローは云わば“大勢の人間たちにとって悪の象徴”たるヒールたちを変に使命感に囚われてヒールを務める者達に対して必要以上の制裁を加えようとする自己満足な人間よりも先に“ヒールを倒す”ことで、ヒールに必要以上の負担を軽減させる重要な役割をもっていた。
「まあ。ヒールって言っても一般人には危害を加えちゃいけないって制約あるもんな。怪我してるのはみんなサクラで、壊してるのは“カンパニー”の所有物。警察とかに捕まる前にヒーローが“迎え”に来てくれる。うん、実に巧みなもんだな」
「その実に巧みなあほらしいプログラムのせいで俺は朝から最悪な雰囲気にどっぷりつかってるけどな」
“カンパニー”
いやらしい話。何事も金が無かったら成り立つことは無いのだ。ヒーローとヒールが壊した建物や怪我したヒーローヒール、そしてお膳立てで頑張ってくれる悪の戦闘要員(俗に言う。雑魚キャラ…いや、俺は彼らに最大の敬意を表している)の人たちにあてられる保険。ヒーロー業には金がいるのだ。
もちろん。政府からの補助金は出ているが、それでも馬鹿にならないほど金が動くことで考え出されたのが“カンパニー”…つまり会社を立ち上げてしまえばいい。そう言うことだった。
“Clear She”
“Ash Ed”
“Bane Narc”
いまや日本で五本の指のトップ上位を占めるこの大企業がまさかその茶番劇を支援するために作られたものだなんて誰が想像できたろうか。
そして、これらのことがふざけた“国民意識統一プログラム”なんてものを実現可能にしている。
「もうこの際どうでもいいから俺を巻き込まないでくれ」
正直、ここまで卑下しといてなんだが“国民意識統一プログラム”事体は別にどうでもいい。ヒーロー・ヒール。大いに結構だ。
ならば何故。俺がここまでこの制度を嫌うのか?答えは至って簡単なのだ。
「そりゃ無理なんじゃねぇの?次世代ヒーローくん?」
そうっ!コレだ?全てはこのせいだ!
「俺は絶対ヒーロー何かやらないからな!」
「でも、“ヒーロー業”の家系は絶対“こっち側”の職業につく決まりだろ?」
「それでも他にあるだろっ機械整備とか現場のサクラとかっ…なんでよりによってヒーローなんだよ!そんな目立つ者なんて絶対嫌だぞっ」
「他のところならそれで通用するかもしんねぇけどさ、しょうがないじゃん?お前、いわゆる“サラブレッド”なんだからさ」
「母親が歴代人気一位のヒロインだろうが、父親がその母親とパートナーで同じく歴代人気一位のヒーローだろうが俺には関係ない!俺は俺の道を行く!」
「ははっ…まあ、俺はお前が嫌だって言うなら別にやらなくていいと思うしさ、とりあえず、俺はお前の味方だから頑張れ。何もできないけど愚痴くらいなら聞いてやるよ」
そう言って恵登は笑った。
「恵登〜…俺がこの人生で良かったと思えるのはお前や兄さんの理解と鞠愛がいるからだよ…」
「ひひひ…そりゃ光栄なことで」
二人でそう笑いながら学校への道のりを歩いて行った。
作品名:I hate a HERO!! 作家名:727