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I hate a HERO!!

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「・・・・・・はあ・・・」
ヒーローの功績を讃えるニュース。この世界の“茶番劇”を受け入れる母と妹。最期の母親の言った嫌―な言葉。
「・・・・・・ヒーローなんて「大嫌いってか?」
「恵登っ!」
声のした方をふりむけば、いかにも“美少年”といった友人。恵登が立っていた。
「おはよう、英雄。その様子だと、今日も久美子さんに迫られたわけ?」
「おはよう、恵登。今日は迫られる前に逃げてきたよ」
「そりゃ何よりで」
「ひひひ」と端麗な容姿を裏切る笑いを零しながら隣にたった。
「相変わらずだな。英雄ン家は」
「全くだ。勘弁して欲しい・・・大体、誰が好き好んでヒーロー業なんざやるかよ」
「いや、きっと十人中十人が好き好んで受け入れるぞ」
「それは“本当のこと”を知らないやつだろ」
「それが“本当のこと”なんだよ。知らないやつにとっては」
そう言ってまた笑うと少し前を歩いて振り返り話を続ける。
「この世界には犯罪者みたいな夢も浪漫も無い悪党のほかに、いまどき“世界制服”なんて夢物語を実行しようとする面白おかしく愉快でかっこよかったり美人もいたりする素敵なヒールと、そんなヒールたちから俺達の平和を守るためっ颯爽と登場する麗しき我らがヒーロー!ヒロイン!・・・それが“向こう側”の常識だ。まさか、思いもよるまいよ。ヒーローとヒールが実はみーんな揃いも揃って仲良しで、今まで繰り広げた笑いあり涙あり、時にはポロリのファンサービスあり、感動ありの歴史は全部台本どおりに演技したお芝居なんですぅー・・・なんてな」
「恵登。こんな道端で堂々とそんな話をするな」
「誰も聞いちゃいないさ。聞いてても、信じやしないだろ?」
そう悪びれもなく言う(多分)親友にため息を隠すことなくはく。
いまの恵登の説明じみた発言をわかりやすく解説するとしよう。まあ、薄々感づいている人間も少なくは無いだろうが……まずはこの単語は話しておくべきだろう。


“国民意識統一プログラム”


こんなふざけた物がいつ出来たのかは知らないし、知らなくても大して重大なものでもない。
とにかく、日本の人口というのは、この狭い領土に遠慮無しに増えていったが、十人十色という言葉にもあるように、人が多ければ思考も様々で、やがて日本から統一性という言葉は失われ、「協調性?何それ旨いの」なんて返事が素で返ってきそうなほどになってしまったわけで、これをどうにかしなければならないと、当時の政府のお偉いジジイ共が頑張って枯れた脳みそを絞って考え出したプログラムが今の輝かしいヒーローたちの世界の幕開けだったわけだ。
「敵対・反発する奴らをまとめる手っ取り早く簡単な方法…」
「共通の敵を作る」
俺の解説じみた独り言を拾って恵登が続ける。
「それがヒールの始まりってわけで、そんで今度はそのヒールの存在を助ける為の存在としてヒーローのご登場ってわけだ」
そしてまた「ひひひ」と笑った。

作品名:I hate a HERO!! 作家名:727