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I hate a HERO!!

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「あらあらあら、ひでくんってば〜ママ、いつも口すっぱくしちゃって言ってなぁい?ヒーローの悪口言っちゃ駄目って」
そうやって息子に鈍器を投げつけておきながら笑顔でお茶の入った湯のみを持って母さん―宝田家母・宝田久美子・年齢不詳―が言う。
「か、母さん・・・茶碗は生命の危機があるから気配を消して投げつけないでくれとあれほど言ったのに・・・」
「おはよー」
「おはよう、ひでくん・まりあちゃん」
もはや投げるなと言わない所には何の突っ込みもなく朝の挨拶が終わる辺りに我が家の常識を察して頂きたい。
「ひでくん。世のヒーロー・ヒロインの皆さんたちは私達の為に日々を犯罪者やヒール(悪役)と戦ってくれているのよ。悪口言っちゃ駄目よ」
「ほら」と言って未だにニュースをやっているテレビ画面をさす。
画面の中には特撮戦隊物もびっくりな戦闘シーンが繰り広げられてる。
「戦ってくれてるって・・・ただ台本にしたがってるだけだろ」
「ノンノンだよっ英おにーちゃん。全国のヒーローの勇姿を糧に今日も頑張ろうとする人々とかっこいいヒールに悶えるお姉さまや今後の展開に腐った妄想を膨らます乙女の希望を根本的に覆す発言は駄目だよ」
鞠愛は人差し指を左右に振りながらそう笑う。
待て、最初はわかるとして、あと二つはおかしくないか?
「それに、仮にも歴代人気の不動の一位の座に座る“ヒロイン”を前に失礼だね」
「ねー」と可愛らしく首を傾げて鞠愛が見た目線の先には・・・。
「いやだわぁ、まりあちゃん。ママ照れちゃう」
そう。俺達の母親がいる。
両頬に手を当てて「きゃっ」と照れたように笑う母親は息子の視点から見ても若々しい。
数年前に、当初一番人気だった“ヒーロー”と共にヒールを倒していた“現役”の頃と変わらず。
「でも、鞠愛ちゃんの言うとおりよぉ。例え“作り物”でも人に希望を与えているのは間違いないわ。そ・れ・に、犯罪者は“本物”で社会にキチンと貢献してるのも事実よぅ」
「騙してる事に変わりないだろ」
「んもうっ。ひでくんは頭固いわねぇ。何であろうと物事結果が全てよ?ひでくんも将来は立派なヒーローになるんだから悪口言っちゃ駄目「俺はやらないって言ってるだろ!」・・・あら」
不吉なワードが聞こえた瞬間に足元に置いてあった鞄をひっつかんで早々に部屋を出た。
「あららぁ」
「英おにいちゃん。今日も見事な拒否っぷり。どーすんの?もうすぐお兄ちゃん十六歳の誕生日なのに、ありゃぁ“こっち側”に来ること断固拒否するよ」
「それは困るわねぇ。ただでさえ召吾が“ヒール側”に行っちゃったんですもの。あの子には“ヒーロ側”に来てもらわないと」
「じゃあ、アレを実行に移すんだ?」
「もちろんよ」


そんな不吉な会話を中学に向かって全力疾走中の俺は知らない。


作品名:I hate a HERO!! 作家名:727