I hate a HERO!!
【全国の皆様、おはようございます。朝のニュースです。】
ちょうど味噌汁をすすっていた時、自分よりも後に起きた妹がつけたテレビからそんな声が漏れて、後に続けて話す。
【昨晩。深夜のコンビニを狙った強盗が――県――市のコンビに強盗に入りましたが、警察到着前に、ヒーローによって取り押さえられたということです】
「・・・・・・・・・」
「英お兄ちゃん?どうしたの?一度起きてご飯まで食べ始めたっていうのにここにきて二度寝しちゃった?」
「おはよう・・・そんな訳ないだろ。それと鞠愛(まりあ)。言うことがあるだろ」
「おはよっ。今日も前髪眼鏡にきっかり学ランと絶妙な地味スタイルだねんっ。でもそんな非目立ちたがり屋でそれを徹底してあえての王道オタクルックじゃなくて普通に一般人チックな地味ルック形成しちゃうところもふくめて今日も大好きだよっお兄ちゃん」
妹―基、宝田家長女・宝田鞠愛。因みに十三歳。―は制服のネクタイを結んで笑いながら向かいの席に座った。
「・・・鞠愛・・・・・・」
「ん?」
少し呆れながら名前を呼べば小首を傾げて返された。ちくしょう、可愛い。・・・ちょい待て、誰だ。シスコンって言った奴。妹が可愛くて何が悪い。
「・・・いや、おはよう。二度寝してたわけじゃないよ。少しニュースを見ていただけだから・・・」
「ニュース?あらま、ヒーロー大活躍だね」
画面の中では、強盗の取り押さえられた経緯や、取り押さえたヒーローの紹介などを述べている。
“ヒーロー”
それがあの四角い箱の中のみで生きる御伽噺のような存在という理念をぶち壊して現実的な世界から飛び出し、なおかつ受け入れられたのはいつのことだったか。少なくとも俺が生まれる前にはすでにあった。
“清く正しく潔く。皆に愛されるヒーロー”をスローガンにかかげ、社会の人口増加による警察の人材不足を補うかのように警察の手から零れ落ちた犯罪者を一網打尽にする正に正義の鏡。
事実、犯罪者の捕縛率は彼ら彼女らのおかげで上がっている。
みんなのヒーロー。子どものなりたい職業文句無しの歴代トップにあきたらず、その存在に憧れる者は老若男女問わず。
「・・・・・・・・・騙されてる」
ガツッ!
音にするならそんな感じの音。それは背後から飛んできた凶器(茶碗)と俺の軟弱な後頭部によって生み出された。
「いっ・・・・・・」
痛い。痛い。これは痛い。あまりの痛みに声が出ない。日常製品は使い方によっては凶器になるという話の再認識。したくもなかったけど!
作品名:I hate a HERO!! 作家名:727