I hate a HERO!!
「決めるのは英雄よ」
そう言われて確かに頷いたのは確かに自分だった。自分だった。(大事なことだから二回言ってみた)それでも、だからって…。
「この状況は何事だーっ!」
あれから母さんはどこかに電話したと思ったら鞠愛に腕をひっぱられて外に出るとどでかいトレーラが一台止まっていた。
「さあさあ、早く」
そう言って中に押し込まれれば嫌な予感は的中し、いわゆる“正義の味方の移動基地”的な内観が用意されていた。
「母さん…これは……」
「なつかしいわぁ。私が使ってたのよ…。急に呼んで悪かったわね」
俺と同じく入って来た母さんが中でパソコンをいじっていた水色のつなぎを着た男性に言った。
「いえいえ、久美子さんのおねがいとあらば何よりも優先させていただきますよ。ああ、召愛くんに鞠愛ちゃんもひさしぶり。それで…英雄くんは始めましてかな?」
男の胸元には“サポーター”の“作業屋”のマークが入っていた。
「は、はじめまして…」
鞠愛が知り合いなのは謎だが母さんを静花でなく本名の久美子と呼び兄貴を知っているのなら“こちら側”でも結構高い位置にいる“作業屋”なのだろう。で、なぜそんな作業屋がここにいるかはぶっちゃけ考えたくない。
「さあ、ひでくん」
「英お兄ちゃん」
二人に片方ずつ肩をガシッと掴まれた。
「う…あ……」
完全に水色の作業屋さんと兄貴が憐みの目で見てる。
「「お着替えしましょ♪」」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!」
暫くトレーラに俺の悲鳴が響いた。
「う?…っ」
「よしよし」
「まあ、元気出せ」
普通に部屋着だったトレーナーをはぎ取られ赤の水玉の入った白の服に白いズボンに着替えさせられ(ここまではまだいい!)前髪を顔が見えるまでに切られた挙句に髪を派手な赤に染められた。赤にだぞ!
「俺は黒髪が好きなのに…」
「あの二人相手はしょうがないよ」
「まあ…うん、勝てる奴いないって」
落ち込んでるところを兄貴と作業屋さんに慰められた。
「まあ、それは置いといてホイ」
作業屋さんが俺に黒い腕にはめるくらいのベルトを差し出した。
「これは?」
「左手に、こう、くるっとつけて」
言われたとおりにベルトをつけると何か[ピピッ]とか、[ウィンッ]とか、嫌な気しかしない機動音がした。
「あの…これ、何ですか」
「変身ベルト。ユニフォームとかを出してくれるのよ」
俺の疑問に間髪入れずに母さんが語尾にハートがつきそうな上機嫌で言った。
「やっぱりかー……っって!何でこうなるんだよっ恵登を助けにいくんじゃないのかよ!」
「あら、だからこそよ」
母さんは心外だと言わんばかりにそう言った。
「そうだね、ひーくん自身が助けに行きたいのならこれが一番いい方法だとは思うけどね」
兄貴が苦笑して言う。
「僕ちゃん様とお母さんと世綴真さんとで準備してたんだよ!」
「世綴真さん?」
「ああ、俺のこと」
そう言って作業屋さんが手を挙げた。そうか、作業屋さんは世綴真さんって言うのか…ってそうじゃなくてっ
「どういうことっ?」
「つまり、“部外者”が助けに行っちゃいけないんだよ。それなら」
「 “関係者”になってしまえばいいのよ」
鞠愛と母さんが順々に言った。
「簡単に言うと、ひ―くんが“ヒーロー”になって助けに行けばいいってことだよ」
作品名:I hate a HERO!! 作家名:727