小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

I hate a HERO!!

INDEX|13ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 



そんな際がなされている時。英雄の自他ともに認める親友である相模恵登は廃ビルの屋上の一個下の階の柱に縛り付けられていた。

「(すっげぇベタだ…)」

そんな事を思いながら、自分の前にいる男を見ながら自分の状況を把握しようとここまでの経緯を整理し始めた。
あれは学校帰り、ちょうど分かれ道で英雄と別れてすぐだ。明らかにスピードを出したバンが正面か走ってくるので避けようとしたら自分の横を通り過ぎようとした瞬間にバンのスライド式のドアが開いて引きずり込まれて身動きを塞がれたままここまで連れてこられた。
「(…英雄と俺を間違えたのか)」
多分さっき撮られた写真は脅迫用かなにかだろう。男とその手下らしき奴らは趣味の悪い色加減の紫の衣装とこれまた趣味の悪い華美な装飾品と明らかに一般人でないのに加え、先ほどから聞こえてくる『深闇』という名前からして恐らくは“ヒール側”。しかも英雄の兄である深闇こと、召愛に一方的な恨みがある。
英雄を浚って一泡吹かせようとしたってところか、しかし彼等は勘違いをした。自分は英雄ではないのだ。
「(英雄は前髪と眼鏡さえ取れば美少年なのになぁ…)」
勘違いされた理由は恐らくそこだろう。そして、彼等はいまだにその間違いには気付いていない。
それはひとえに恵登が頑なに口を開くことをしなかったこともあるのだろう。
「(これで英雄は安全だろうし…)」
さて、自分はどうしてこの場から脱出しようか。
実際、恵登には一般水準よりも上の戦闘能力をもっている自信があった。それも、昔からむりやり遊びとした称した英雄の母親のヒーロー育成訓練に付き合っていたからである。あそこの母親は妥協という言葉と手加減という言葉を知らないな、と幼心に実感し、一人でそれをこなす親友があまりにも哀れだったのもあるし、恵登自身、英雄と遊べないのが嫌だったので二人のいう“遊び”の内容が“訓練”になるのもそう遅いことでは無かった。
「(でもテレビ来てたしな…)」
眼の前のバカ達が匿名か、それとも犯行声明でか、どちらにしろ呼んだのだろう。もし、ここで恵登が一人でここの連中を倒す(実際たやすくできるだろう)として、その後に一人で無事にビルから出れば自分は確実に長かろうと短ろうと注目の的となるだろう。
「(英雄は目立つのきらいだからな)」
そんな事態になれば当分は一緒にいれなくなる。
「(それは嫌だなぁ…)」
それか自分が倒した者たちの功績をどこかのヒーローに押し付けてしまおうか。
今回の件で恵登は明らかに被害者だ。英雄経由でいまだ“ヒーロー側”に強い影響力のある彼の両親に事情を話せばそれくらいの願いなら応じてくれるだろう。
「(それでいくか…)」
今後の方針は決まった。しかし既にヒールに不運にも囚われてしまった一般人の手前、無傷というのも考えようか。
「(それに倒すにしても訴えられたら面倒だし正当防衛のほうがいいよな…)」
「おい」
そんな事を考えているだなんて露ほどにも思ってない恵登曰く趣味の悪い色加減の紫の男は話しかけた。
「お前さんも不運だったなぁ。あの“深闇”の弟で無かったらこんな目にあわなかったのによお」
そんな頭の悪そうな言葉を言ってこれまた頭の悪そうな笑みを見せる。
「しかし、あの“深闇”の弟ってのがどんなもんかと思ったら結構ちょろいもんだなぁ。ヒーロー側期待の金の卵もとんだうずらだったな」
どうやら全力でヒーローになることを拒否している英雄の意識は無視で“こちら側”で英雄は大分期待されているらしい。男は書類の様なものを出してみる。おそらく不法に手に入れた英雄の保護プログラムの書類だろう。
「宝田英雄ねぇ…ハッ随分なお名前で」
そう言って鼻で笑った。


「(あっ、ちょっとカチンときた…)」


「サラブレッドだが期待のホープだが知らないが所詮は親のと兄貴の七光りなんだろう?大した実力も無いくせにでしゃばっていって生きていけるほどにこの世界は甘くないんだよ。お坊ちゃ「でしゃばってんのはてめぇの方だろうが害虫」
一気に恵登の纏う雰囲気が変化した。
「!」
縛って身動きは取れないようにしている、こちらに有利な状況であるはずなのに、睨まれただけで思わず固まってしまった。
「さっきから聞いてればぺらぺらぺらぺらと頭と一緒でうっすい事ばかり言いやがって」
思わず人工のもので隠してあるソコをバッと押さえながらも男は恵登の激変に困惑した。
恵登が激変した理由。それは至極簡単なことだ。彼は怒っているのだ、彼のことを何も知らないような輩に、自分の親友が侮辱されたことに怒っているのだ。
「大した実力も無い?それって自分のことじゃないの?あまりにも気付かないから可哀そうだから教えてあげるけそ俺、英雄じゃないよ?」
「何っ!」
脅しなのか叫ぶついでに近くにあった窓ガラスを割った。
「うるさいよ。ここ響くんだから叫ばないでよ。そんな事にも気付かないでよく人の実力云々が言えたものだね。むしろよくこの世界に入れたね。あんたこそ何かのコネ使ったんじゃない?」
そこまで言えば男は怒りからかそれとも図星なのか顔を真っ赤にした。
それでいい。そのまま一発でも殴ってくれればこちらは正当防衛を盾に思う存分暴れることができるのだ。
その思考の通りについに怒りと恥を我慢できなくなったのか、男が恵登に向かって拳をふりあげた。
「(よしっ)」
恵登はほくそ笑んだ…が、彼が予想した痛みが恵登を襲うことは無かった。
何故なら、恵登に拳が届くその瞬間、趣味の悪い紫は鮮やかな赤に蹴り飛ばされたからだ。


「俺の親友に何しようとしてんだよ!」


 そこには全身を赤で基調した本人が一生着たくないと豪語していた所謂“ヒーロー衣装”身にまとった親友が立っていた。




「………英雄?」




呆然と事態の把握に悩む恵登。彼の疑問に答えるには、視点と時間。その二つを少し変える必要があった


作品名:I hate a HERO!! 作家名:727