グリーンオイルストーリー空の少年たち 2
「じいさま、僕たちをチビっていうの、やめようよ。」
レインは拗ねて言うと、片手に持っていたビンをカスターに渡した。
「じいさま、いつもありがとう。愛してますよん。」
カスターは、持った瓶にほおずりした。
「ロブ、お前さんが13歳のときには、アクロバット飛行の試合勝利者の常連だった。ジリアンにあってレインに才能がないわけはなかろう。試してやってくれないか。」
「ラゴネ、レインに泣きつかれたのか。」
「泣きついてなんかないよ、兄さん。」
ロブは右手の人差し指でレインの顔を指した。
「こいつは、度胸なし、根性なし、弱虫で泣き虫のヘタレなんだ。乗せて下手に死なれたら、親父に顔向けできないんだよ。」
レインは目を見開いて、唇をかんだ。
「ロブ、顔向けできないのは、親父さんじゃないだろう。」
ロブは、それ以上何もいえなくなって、カスターが持っていた瓶を取り上げて、展望台から出て行った。
「ロブ、逃げるのか。返事はなしか。」
続けざまにラゴネがロブに言葉をなげた。
「返事はノーだ。レインは整備士と航空士の技術を身につけさせる。」
ロブは床を強く踏みつけて、音が鳴り響くように、その場から立ち去った。
「ああ、僕のナイトキャップ。じいさまが作ってくれたものしか、飲めないのに。」
カスターは親指を口で噛むと、レインの顔をみた。
涙をこらえてるレインだったが、大きな目から大粒がこぼれ落ちた。
カスターはレインを抱き寄せた。
「ロブの屈折した愛情表現なのよ。理解してあげて。」
カスターは時々、女言葉を使う。
それは、母親代わりののために使っていた。
カスターの抱きしめから離れようと両手で押さえつけるが、カスターはレインを離そうとしなかった。
あきらめたレインは、カスターの胸にうずくまって、泣きじゃくった。
ラゴネはやれやれと思いながら、展望台を出て行こうとした。
「キャス、地下水のレバー開けておいてくれないか。第三タンクを空にした。培養にはいるよ。」
「ラジャー」
まだ、他に言おうとしたそぶりを見せて、ラゴネは出て行った。
ジルは、展望台のフロントから、外を眺めていた。
「さっきまで晴天だったのに、曇ってきたよ。やっぱり雨が降るのかな。」
レインが泣くのをやめた。
「おいおい、こらこら、ジル。」
カスターはジルが何をいいたいのかわかっていた。
作品名:グリーンオイルストーリー空の少年たち 2 作家名:久川智