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「蓮牙」2 源助とドール

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 ドールは拳銃なんかでは埒があかないとさとり、腰のエネルギーカートリッジ銃を引き抜いた。
 ポケットをじゃらじゃら言わせてカートリッジを取り出す。
 「化け物野郎め…、めにもの見せてくれる」
 ドールはポケットの中から掴み出したカートリッジを器用に指の間に挟んで、一つを銃に装填した。
 カートリッジ銃は、通常一個のカートリッジで拳銃にすれば二十発分ほども撃つことができるが、装填したエネルギーを一発に集約して発射することもできた。
 「若造どもが、どうしても死にたいようだな」
 グローバーの思考力は、その化け物じみた外見ほどは低下していないようだった。獣身に変化してもこれほど落ち着いて言葉を発するというのは、身体の二分の一以上が獣のキメラにしては珍しいことだ。隻身のグローバーは撃たれたことも全く意に介さない様子でゆっくりと二人に近付いた。
 「三○○万はぱぁだぜ、畜生」
 ドールはカートリッジ銃をグローバーに向けて両手で構えた。
 一個分のエネルギーを一発にして撃てば、厚さ五○ミリの鋼板も貫通するだけの威力がある。いくら拳銃の弾をはじき返す化け物とはいえ、ただでは済まないだろう。
 「喰らいやがれ」
 彼は狙い定めて銃を発射した。
 反動で銃口が跳ね上がる。
 閃光が、近付いてくるグローバーの身体を包み込んだ。
 熱風が顔に吹き付ける。
 恐ろしげな獣の咆吼が夜の街に響き渡り、爆音が地面を震わせた。
 巻き添えを食った建物の壁が埃を巻き上げる。
 ドールは銃の反動で跳ね上げられた両腕をそのまま頭の後ろで組んで、丸焦げか悪けりゃミンチになっているだろうグローバーの姿が土埃の中から現れるのを待った。
 しかし、信じられないことにサングラスで減光された閃光の残像の中から現れたのは、丸焦げでもミンチでもない巨大な鈎爪だった。
 「ドールっ」
 それぞれに極太のナイフを付けたような巨大な指がドールの身体を引き裂こうとしたそのとき、二人の間に源助が飛び込んだ。
 五本の鈎爪を鎌の柄で受け止める。
 「ドールっ、てめっ、殺されっぞ」
 源助は背中越しに相棒を怒鳴りつけた。
 が、彼もグローバーの一撃を瞬間的に止めるのが精一杯で、すぐにがくんと膝をついた。
 「源っ」
 全く無茶苦茶だ。こんな化け物、手に負えるか。