KNIGHTS~before the story~
頑張る
みんなで話し合った結果、今日は俺だけで野口君とお見舞いに行くことになった。病院に大人数で行くわけにはいかないし、みんなが俺に気を使ってくれたんだ。
「ここです」
病院の廊下をしばらく歩いてから、あるドアの前で立ち止まる。ドアの横には確かに、【浅井奈津希】と書かれたネームプレートがあった。
野口君がノックをすればドアが開かれ、野口君と同い年であろう男の子が現れた。目が合い、軽く会釈を交わすと、彼は野口君に向き直る。
「浅井さん、起きたよ。アレも渡しといた」
そう小声で言いながら、彼は病室から出てそっとドアを閉じた。
「どうだった?」
「あと一押しってトコかな。ボールでかなりきたみたいだから」
へらりとした笑みで野口君の質問に答えたその子は、今度は俺を見て言った。
「あと、頼みます」
辛さが滲んだその言葉にハッとする。
そうか、この子も、なっちゃんとずっと一緒にいたのか。あの子を支えてくれていた。
そうして、なっちゃん自身が手を伸ばしてきてくれることを願っているんだ。俺たちのように。
「頑張るよ」
なっちゃんの為にも。
野口君や彼の為にも。
俺たちの為にも。
また、みんなで笑って過ごしたいから。
あの頃の俺たちには、壁も溝もなかった。なっちゃんも、何だって話してくれたじゃないか。
どうかまた、俺たちを頼って欲しい。
野口君に、なっちゃんと二人で話させて欲しいと告げて、俺はドアに手をかけた。
なっちゃん、俺たちは兄と妹のような関係だったけど、チームでもあったんだよ?
作品名:KNIGHTS~before the story~ 作家名:SARA