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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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 聡雅は頭をがりがり掻く。少なくとも以前よりはマシになっているはずだ。
 そして別の問題点に気付く。
「じゃあなんて呼べばいいんだよッ」



「…やっぱりやめないか」
「ええ。気持ち悪いですね、やめましょうか」
「お前が言わせたんだろうが」
「“お前”はやめてください」
(こいつ…うぜぇ)
 聡雅と錦は小部屋の中にいた。
 聡雅と錦は昇降口から小部屋の中まで、ずっと錦を聡雅がどう呼ぶべきかについて話していたのだった―――無論一方的に聡雅が錦の要望に答えていただけではあったが。
「やはり、名前で呼ぶのが自然なのでしょうか」
(そりゃあまあ…“貴女様”よりは)
 英国紳士を名乗る男達と接して育ったという少女にとっては、それが自然なのかもしれなかった。
 錦は人間でないのだという。
 当たり前の事かもしれない―――魔女(ラビ)と人間は、やはり決定的に違う。魔女の使いもまた同じなのだ。
 人間では魔女にはなれない。血統が異なるのだ。努力しても黒人が白人になれないのと同じである。
 動物は同じ種族間であっても科目が異なる。同様に人にも種類がある。
 単純な肌色の違いだけではない。
 異なる血統、異なる骨格。容貌でそれと分かる場合もあれば、傍目では違いの分からない場合もあるだろう。
「それにしても、魔女(ラビ)の言った通りだな…『種も適応し、変化する』」
「過去の例でも同様のことがありましたからね。魔女(ラビ)達には先見がありますが、しかし基本的には積み重ねてきた先例や前例の研究・観測結果によるところの方が大きいのです」
「“観測”ね…お前らは一体なんなんだ?何を目的にして行動しているんだ」
 聡雅には別の仮説が頭の中に浮かんでいた。だがそれは取りとめもなくまだ彼の中で成熟しきっておらず、未消化なままだったので、上手くそれを口に出来なかったのだ。
 そう“観測”―――魔女たちは何かを観測しているのだ。
 時折彼は感じることがある。自分がつまらなくも平穏無事に生きているこの世界の片隅では見えない事がある。実は自分の預かり知らぬ所で、壮大な何かが動いていて、自分はその大きな流れにちっぽけに生きているに過ぎないのではないか―――あっという間にそれは広がっていって、まったく同じような速さで収束していく―――自分のような人間からはそういうものは覆い隠されているのだ、と。
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流