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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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 “種を食う”というのは、つまりどういうことなのか。文字通りだとして、具体的にどのようにして襲ってくるのか。相手の出方が分からない。
 そして、他にもうひとつ引っかかる点があった。
(そういえばあの魔女(ラビ)とかいう奴は、『危機に合わせて“種”の方も適応変化をする』とか言ってたな…あれはどういう事なんだ?) 
 はたから見れば気だるい午後の放課直前儀式を乗り切らんとするだらけた少年だったが、彼は今その場の誰よりも真剣に頭をフル回転させているのだった。
「起立」
 週直の気の抜けた声が響き、いつの間にか担任のくどい話が終わっている事に彼は気付く。
 怒られない程度の声で挨拶をして、怒られない程度の礼をする。
 そして次の瞬間にスイッチが切り替わり、一転して室内が想像しくなる。
 同時に教室を出て最下階の昇降口へと降りる人々。
 その多くは課後活動か課外活動へと出る者たちで占められている。彼のように、そのまま寮に直帰する者はほとんどいないだろう。
 彼は再度椅子に座った後、もう一度彼女の方を見る。
 流生と聡雅は教室では全く話をしない。
 彼女の方で何を感じているかは分からないが、少なくとも彼の方には多少なりとも理由はあった。
 “話せない”のだ。どうしてもあの小部屋の観察室でのような話し方が、教室になるとできない。
 恐らく周りに人がいるからだ。
 一対一で話しているときと、周りに人がいる(それも多少なりとも関わった事のある人ばかりがいる)場所だと、どうしてだか上手く彼女と話せない。
 人にはスイッチがあると思う―――誰かと接するとき、人はそうやってスイッチを切り替えている。ラジオのチャンネルと似ている。
 あの人にはこの周波数―――この人には別の周波数―――そうやって常に自分をいつも切り替えている。
 それは人だけではなく、場や空気にも大きく左右される。
 教師の話し方が、教壇に立つとき、講堂に立つとき、面談で話すときで異なるのと同じだ。
 それは突き詰めれば状況に合わせて適応しているという事になる。人はそのようにしてシチュエーションにコミットするとき、自分をある程度騙し、演じているのだ。
 それは極々自然なことであり、なんでもないことである。
 しかしそれが聡雅に限っては―――
(どーにも上手くいかん…難しいな)
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流