竹草少女
「まあ諸事情はそのうち話すけど、今はそんなことを気にしている場合ではないだろうよ。もう“鴉”は動き出しているはずだから、早急に対策を立てることをお勧めするよ」
「クソッたれ」
「はっはっは、まあ伝えるべき事は伝えたからな。ひとまず錦を貸してやるから、上手く対処することだ」
一方的にそう告げると、便箋が突如炎上する。
文字通り火を上げて、灰の残りカスまで一瞬にして消えてしまう。
(ずいぶんと凝った演出なことで)
聡雅は胸中で呟く。
錦はというと、黙って聡雅を見ている。
「結局事実性ばかりが目の前に押し寄せて、何も分かりゃしねえ…」
ここ数日の彼はとにかく頭が痛い。
(だいたい貸してやるって言ってもな…)
目の前の少女―――錦が、おいそれとは聡雅のいう事を聞いてくれるとも限らない。
“種”のことも、魔女(ラビ)の目的も、これから先のことも―――なによりも自分がそれを前にしてどうしたいのかも、どうしたらいいのかも。
何もかもが不透明で掴みきれない。
なんとも適当で大雑把―――だが彼はそれでも。
「こんなもん貰って、俺はどうすりゃいいっていうんだよ…」
いつの間にか、案山子が彼の太ももから片腹にかけて、身体を引き裂いて出てきていた。
困ったように彼はそれを見つめる。
―――間違いなく、もう彼は後戻りが出来ない。