竹草少女
「いや、なんだかんだ言って筋の通ったことを言っているなと思ってね」
「笑ってんじゃねえよ、結局説明になってねえだろう」
「そう、その通り。説明なんかなってないんだよ。“種”が何なのか。それははっきり言って『わからない』。わかりっこないだろう?想像しようと思えばいくらでも定義に当てはめられる。空から落ちてきたのなら宇宙人かい?ならば竹取物語で有名なかぐや姫は宇宙人かい?でも彼女が妖怪だとしている説も多々あるね。空から落ちてくる妖怪だって多岐に渡る」
「ふむ」
「答えはいつも君自身が思ってることなんじゃないかい?」
「それは…」
「そう、“そんなものは、適当で、曖昧”なんだよ。ろくに主体を見てすらいない。それが本質的に何なのか、どういう事なのか、なんてことは分かりっこない。そういうものに対して『宇宙人だ』『いや妖怪だ』なんて言ったところで、なんの意味もない。そう思わないかい?あくまで“種”は“種”だ」
そのとき不覚にも聡雅は「なるほど」と思ってしまったのだった。
結局のところあの“種”が何なのかはわかりっこない。ただそれでも、『一つの生命体であり』『天敵が存在し』『生延びるためにその性質として他者に何らかの能力を撒き、開花させる』というその事実だけは重要なのだ。
「だからって、こんな化け物をいきなりよこさなくってもなあ…」
どうしてもその辺で聡雅は顔をしかめてしまう。
「何度も言ってるけど、化け物と自分で自分のことを言うのはやめた方がいいよ。君がどう足掻いても案山子(スケアクロウ)は君自身を顕しているんだ。そして種を守るのは案山子の役目。君はあの種を守るためにその役割を与えられたのさ」
だが声の方は、相変わらずやけに確信を込めて話してくる。
「ということは、あくまで俺に与えられた能力だから、こいつが出てきたというわけか」
「そういうことになるね」
(…結局駄目じゃん)
魔女(ラビ)の方は、何がおかしいのか半分笑っているような声で続ける。
「その案山子(スケアクロウ)は、“守護者”の象徴(シンボル)なんだよ。具体的に細かいつくりまでは本人に依存しているが、“守護者”の象徴(シンボル)だけは今も昔も変わらない」
「こいつがこんな姿をしているのは俺のせいってことか?」
「まあ、そういうことかな」