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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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「『人は自分自身が受けた精神的損傷をどうにかして相手にも負わせようとしたがるので、このことで傷付けば傷付く程に、彼は君の元から去る事を望まないだろう。何故なら期を逸すれば報復は不完全な形で終わってしまうからだ』。あなたが足を止めている理由がこれですか。付け加えれば『怒りや憎しみもまた、ひとつの繋がり。相手を自分にひきつけておきたいと思わせたいなら、ただ興味や関心を惹くだけでなく、怒らせるというのもまた一つの手なのだよ』とも、“主(ラビ)”は仰っていました。かなり効果的に作用しているようですね」
 少女は何が嬉しいのか―――それは子供が自分に父親を誇らしいと思う感情に似ているかもしれない―――美しい微笑みを絶やさない。
 だが次の台詞には、その笑顔に弱冠異なる感情が含有されていた。
「でもあえて私が思うことを述べさせていただければ…」
 その言葉をほとんど聡雅は聞いていなかった。いや、聞いていたからこそ、頭の中でそれを掻き消したのかもしれない。
「怒るような事を言われたから怒るって、とても退屈な方ですね」
 少女に表情にほんの数ミリ含まれた感情―――それは侮蔑。真面目な人間―――それは退屈。

 普通に出来ることが出来ない人間というのは必ず存在する。
 彼は言うなれば―――どうでもいい事を真面目に考えなければ行動できない人間なのだ。
 何となくで行動して、浮いてしまう。だから人一倍考えなければ、周囲に馴染んで生きていけない。
 しかし考えることそのものにたいした意味はない。セカイはそこまで考察され、精緻に作られて形成されているわけではない。そこにあるのはほとんどが恣意性なのだ。
 だからこそ考えれば考える程に、そのことに彼は気付いてしまって―――結果、彼は知るようになる。
 どうやらこの事に気付いているのは、自分だけなのだというまさにその“孤独”に。
 “どうせ人は人の事を分かりっこないのだ”―――そう彼は思うようになったのだ。
 こんな適当なセカイじゃいちいち考えて行動なんてするだけ阿呆―――でもその事実が分かったところで、彼が取りとめない周囲にあわせて生きていかなければならないという現実の方に変化はないのだった。
 そして同様にこの事実もまた、変化がないのかもしれない。
 人生が退屈なのは、それを生きている人間が退屈なのだという―――。
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流