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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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 やがて伸びた鉄骨のひとつひとつが伸びて絡まり、彼の背後と頭上で一つの形を成していく。そのたびに彼の体のあらゆる場所が裂けていくので非常に不気味な様子だったが、特に血が流れたり欠損していく様子もなく、するすると出て行くものが出て行った後で自然に塞がっていくのでただひたすら気味が悪い。
「“案山子”だったか?俺に与えられた役割っつーのは」
 ひときわ大きく聡雅の体が裂け、帽子や手袋や目玉などが抜けていく。それらは先に伸びていた鉄骨を辿るように移動していって、やがて定位置に収まっていく。
 帽子を被り、藁のような鉄骨群で形成されたみすぼらしい身体をぼろきれや帽子や手袋で覆い隠した姿は―――その背に大きな一本の杭が突き刺さっているところも紛う事なき―――いびつで恐ろしい形をした案山子なのだった。
 最後にずるりと聡雅の頭を割って飛び出した仮面が、無機質な眼球の上に被さって完全に姿を現す。
「種を守るのがこんな不気味な“案山子”じゃあどーにも格好つかんな」
 今この二人を外部の者が見たら絶句するに違いない。影と毛髪からヘビを象った黒い泥状のような奔流を噴出させる少女と、裂けた体から歪な案山子を顕現させた少年が向かい合っているその様子は、まさに猛禽類同士が互いに殺すか殺されるかの緊迫した空気と同一だからだ。
 いくら旧校舎とはいえ、人目無しに見せられるようなものではない。しかし聡雅も錦(にしき)と呼ばれた少女も、何か確信している根拠のようなものがあって、決してお互いに引き下がるつもりはないようだった。
 普通に考えれば奇妙なことではあった。学園における昼の始業の鐘は清掃の合図なのだ―――いくら旧校舎とはいえ、誰一人として彼らの周辺に人が訪れないのはいささか不審だ。まるで彼らの周辺に結界でも張られていて、近づくことを許されていないかのように。
 そして奇妙な事に、彼らの周辺の大気はまるで灰色がかったように硬直しているのだ。
 廊下を少女の黒い泥蛇が這って擦れる重低音が響く。
「主(ラビ)からの伝文を授かっております。それと『役割(キャラクター)に圧倒されて飲み込まれていないか確認しておけ』とのこと」
「それで、魔女様の忠実な“弟子(オキュペー)”がわざわざ出向いてきたというわけか」
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流