竹草少女
「さて、と!私お昼食べてくるわ」
ぽん、と膝に手を当てた彼女は座椅子から立ち上がる。お腹が空いてきたのだ。
「まだ食べてなかったのか」
「さっきまで委員会活動してたのよ、そのままここに来たの」
「よくまぁそんな面倒くさい事を…」
「偉いでしょ?」
「コメントしずれーな、それはどっちの意味だよ」
「どっちの意味でもよ」
聡雅は宙に視線を漂わせて思案する。こういうどうでもいい事を真面目に考える男なのだ。
「芽を見に来るのは別に偉くないが、委員会活動はご苦労なことです」
「でしょ。誰も評価してくんないのよー」
何かと役割に引っ張られる彼女が欠かさず来れる時間帯は、お昼休みぐらいしかないのだった。
「それはしょうがない。やってみなきゃ実感できねえ辛さもあるんだろーし」
「そうよねぇ」
こういう小さな同意を彼女は楽しんでいた。
「そいじゃね」
「おう」
「放課後よろしくね」
「ああ」
どこか聡雅の返事が遠い。
(大丈夫かなぁ…大丈夫よね)
それはいつもの事だったし、そもそも「大丈夫なのか」なんて自分が言えた科白ではないと思い出し、彼女は図書室を後にした。