竹草少女
「かわいいねぇ」
「…」
「どんな風に育つんだろ」
聡雅が答えないので、流生の一人問答みたいになってしまう。
「ねえ、あんたっていつもそんなんなの」
「何だよ」
無反応の聡雅に流生がやや剣呑に突っかかると、聡雅が面倒くさそうな顔で顔を上げる。
「女の子に対していつもそんな感じなの?」
ケースによるだろ、と言ってまた彼は本に目を落とす。
「基本的に俺、ニヒルな男は好きじゃねえしな。悟ったみたいな顔しやがって現実に目の前にいる女と馴れ合う努力をしない奴は嫌いだ。気取ってるがその実自分には何の中身もないのを隠そうとしているか、自分でも気付かずただ無意味にパフォーマンスをするだけの幼稚園児だろ。相手の関心を買いたいからって無関心気取って、自分で孤独の道を突き進む男は正直滑稽すぎる。格好悪いわ」
「なんか、すっごい話が飛んでるんですけど…ていうかまさにあんたじゃん!」
「心外だな。俺はあんたといるときはこうなだけだ」
「それは、そうかも」
その通りなのだった。むしろ彼は非常に親切な男ですらある。話しかければなんだかんだ言って受け答え、雑談を流せばしっかりキャッチしてくれる。
頼めば大抵の事はしてくれるし、機転も利く。ただ一番最初の段階―――話しかけるのが難しいというだけの事なのだ。
よく見ていれば彼もまた人並みによく話す友人を持ち、気さくに自分から話しかけたり、話しかけられたりしている。回数こそ少ないが。
彼女も聡雅のそういったところを理解しつつあった。
「ねえ、それってあたしだけにそういう姿を見せるって事?」
「うわぁ…出たよ」
本から勢いよく顔を上げて、聡雅は天井を仰ぐ。
その動作に流生は目を丸くする。
「何よ」
「お前らって何でそうやってすぐにツンデレ認定するんだ」
「え…」
唐突過ぎて彼女には話が分からない。
「面倒くさいったらありゃしねえ、そうなると俺はツンデレ風に振舞わないとその度に『おかしい』『似合ってない』って事になるじゃねーか。あーあー馬鹿らしい、これだからお前らはガキだっつーんだよ」
彼はよく唐突に話を広げて自説を展開する。
流生からすれば何を言っているのか分からないのだが、ともかく心底そういうときの彼は嫌そうな顔をしているのだった。