竹草少女
「今度俺が“二人乗り”のときのオート・サイクルの運転の仕方ってもんをきっちり教えてやる…」
「あんたも持ってんだ?なんで乗ってこないの」
寮の前で降りると、聡雅は青い顔をしてふらふらと降りた。
「正確には“持ってた”だな。今はもう売っちまった」
「ふうん」
曖昧に頷いてみせる彼女に手を振り、聡雅は寮の入り口へと進む。
「ねえ」
ふっと沸き起こった感情に、彼女は少し戸惑って、それでもそれを素直に彼に伝えた。
「一緒にさ、育ててみない?」
「おう」
あまりにも短い。あまりにも素早い。あまりにも呆気ない。
「うん」
それでもどこかそれを聞いて、彼女は安堵していた。
だからその二文字だけを聞いて、彼女はすぐにその場を立ち去る事ができた。
それで、その後に彼が呟いた言葉を完全に聞き逃した。
「ぇ、何を?」
立ち尽くす少年の前で、白煙が虚しく揺れた。