竹草少女
「で、どうするんだこれ」
校内菜園の土を勝手に持ってきてどんどん植木鉢に放り込んでいく様を眺めていた流生は、聡雅の言葉に疑問符を浮かべる。
「どうするって…育てるの」
「それは分かってる。どこで育てるんだ」
「そりゃあ…」
自分の家で、と言おうとして(これを家まで持って帰れるのか)と思い直す。
「自分の家の部屋にこんなでかい植木鉢を置いておくつもりかよ?しかも得体の知れないエイリアン」
「うーん」
エイリアン云々はともかくとして、確かに自分のあの狭い部屋にこの植木鉢を置いて育てていく自信はない。
「考えてなかったのか」
「はい…」
素直に答えるしかない。
「どうしよっか、あはは」
分かりやすく笑顔で誤魔化してみたが、聡雅は真面目でかつだるそうな顔をまったく崩さない。
一瞬彼氏の家で育ててみたら、という考えがよぎったが、恐らく断られるだろうと思って流生は断念した。だいたいこの少年は寮生なのだ。四畳半の部屋に置いておけるスペースなど無いに違いない。
「どこで育てたいんだ」
そう言って空になった土袋を丸めて放り投げ、聡雅がくすんだ灰色の双眸をこちらに向けてくる。
「うーん…」
流生はいろいろと思い浮かべてみる。
暖かくて涼しい所、静かで周りの音が聞こえるところ、明るくて暗いところ、じめじめしてて爽やかなところ―――。
「なぞなぞか?」
「ううん、違う。だって答え知らないもん」
そのまま言うと、これまた生真面目に返される。彼女はひたすら笑うしかない。
ただ意外にも彼が真面目に考えてくれているようだ、という事がそのとき流生には分かったのだった。
「…あくまで」
「うん、なになに?」
しばらく顎に手を添えて考えていた聡雅が口を開いたので、彼女は身を乗り出して聞く。
「あくまで俺の主観だが、そういうところがないわけじゃない」
「ふうん?で、どこ?」
答えを急かす流生に、聡雅は渋い顔をしながら校舎を指す。
「口で説明すんのも何だし、実際に見たらいいんじゃないか」
「校内にあるの?まさか変なとこ連れて行く気じゃないでしょうね」
「図書室を変なトコと言う奴にはじめて会ったわ」
「図書室!?」
いいからちょっと来いよ、とゴム手袋を外した彼氏は、彼女に手招きをする。