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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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 にんまりした流生の顔を、苦りきった顔で見つめながら聡雅は渋々といった表情で言う。
「それ、生きてんのか?」
「そりゃそうでしょ。もっかい触る?」
「いいよ…別に」
「もしかして遠慮してんの?」
 おかしそうに流生は笑って種を鞄にしまう。
「気味悪いな…本当に育てるのかよ」
 冷や汗を流しているかのような顔で聡雅は鞄の方を覗いてくる。
「そのために堆肥取りにきたんだもん」
 ゴム製の大きな植木鉢を突き出す。四分の一くらいの空間を堆肥が占めている。
「植物って保障がないだろ」
「植物じゃなかったら何なのよ」
「卵の可能性だってある」
 間髪入れずに返されて、はっとする。
(それは盲点だった…)
「それは盲点だった、って顔してんなぁ」
 ずばり言い当てられて流生は首を縮ませる。
「でも見た目はどう考えたって種じゃない」
「種は動いたりしねえだろ」
 うっ、と言葉に詰まる。彼女が最初に触れたときは動いたりしなかったのだが…。
 しかし卵なのだと考えれば、彼女が触れたときにぬくもりを感じた事にも説明がつく。
「で、でもそれはあくまで地球の種の話でしょ」
「まあたしかにそうだが?」
 今度は聡雅が黙る番だった。だがその沈黙はある種の意図を含んでいるものであることに、彼女も気付いた。
「わ、分かってるわよ…全然反論になってない…」
 ならば、あくまで地球の卵が種のような形をしてないだけ、という話にもなる。
「そっか…種じゃなくて卵の可能性もあるのね」
「まあどっちでも大差ないんだけどな」
「なっ!?」
 じっと鞄を見つめて悩みだした流生に、あっけらかんとして聡雅が言う。
「卵か種かなんて分かりっこないんだから。ならとりあえず種って事にして、植木鉢に埋めときゃいいんじゃねえの」
「あ、あんたってなんか…」
 流生の中ではしっくりこない。半ば本気で吟味をしかけていた矢先なのだ。無駄に悩んだ事が馬鹿みたいに思えてくる。
「じゃあ最初からそういう事言わないでよ…」
 彼女が煮え切らない思いをそのままぶつけると、聡雅はまたしても例の「ん?」という顔をする。
「ああ…悪かった」
「そんなにさっくり謝ることないじゃん」
 あまりにあっさり謝るので逆に指摘したくなる。
「謝られて怒るか普通」
「むかつくなぁ」
 ぷりぷりしている流生をじっと見て、聡雅は苦笑する。
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流