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ほのむら伊流
ほのむら伊流
novelistID. 498
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竹草少女

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「だから大丈夫ですって」
「まあ確かに目立った外傷はないものねえ…」
「でもお前、ちょっとぼーっとしてるしおかしいぞ?」
 ソフト部の監督と保険の女医が心配そうに見つめる前で、彼女は愛想笑いを全開にしていた。
 あの状況を考えればむしろ彼女の外傷が、目だったものどころか小さなかすり傷すらないという事にむしろ怪しさを感じてすらいたので、保険医も監督も執拗に彼女の安否を尋ねた。その度にどこかぽかんとした返答しか帰ってこないので、監督の方はやや苛立ってすらいた。
 流生はといえば、彼らが何かを喋っている事は分かるのだが、ほとんど上の空で、それよりも自分の拾ったものが何なのかばかり考えていたのだ。
(もしかしたら、すごいものを拾っちゃったんじゃない?)
 もし本当に自分の予想通り、拾ったものが“種”であるなら、地面に埋めて育ててみれば一体どんなものが育つのだろう。
「なんだかよく分からんが、お前はもうちょっと先生に診てもらいなさい。それでは先生、わたしはソフト部の方がありますので」
 部活の顧問は大会を前にしていろいろとしなければならない事があるのだろう。流生も陸上部のマネージャーなのだから、急いで部活に向かわなければならないはずだ。
「診るといってもねえ…ちょっとぼーっとしちゃってるのが気になるけれど、視線も定かだし脳に異常はないみたいなのよねえ」
「だからほんと大丈夫ですってば」
 とりあえず今日は寮に戻って休みなさい、と言う女医の言葉をありがたしと受け取って、彼女は自分の部屋に帰ろうと思った。
この女医がわざわざ連絡をしてくれるとは思わないが、陸上部の顧問には事後説明で充分だろう。それよりまずはこの“種”を何とかしたい。
(あ、そだ)
「先生、植木鉢とかある?」
 ふっと思いついて女医に尋ねると、女医が戸惑いながら反復する。
「植木鉢?いきなり何なのよ…」
「とびっきり大きいヤツで!」
 不思議そうにしながらも女医が差し出したバケツ大のゴム製植木鉢を引っさげて、彼女は意気揚々と保健室を飛び出した。
「頭打ったせいで何か閃いたのかしら?」
 やや変なことを女医が呟いていた気がするが、そんな事も気にならないくらい彼女の気分は高揚していた。
(地面に埋めるのはやめたっ!やっぱり植木鉢に入れて、一人で鑑賞するのがいいよね!)
作品名:竹草少女 作家名:ほのむら伊流