竹草少女
やや呆然気味の彼女を―――こちらもまたやや不思議そうな顔で―――見つめながら、彼女は少しだけクスリと笑い、通学用鞄を手に階下へと姿を消した。
最後まで生徒会室に残っていた以上、彼女もいろいろと何かをしていたはず―――立場的には彼女の方がすべき事は多いはずだが―――なのだが、そういう雰囲気を一切感じさせていない。さり気なく発言の端々にフォローも入っている。
まさに“完璧”(ザ・パーフェクト)だった。去っていく姿まで嫌味なくらい完璧だ。
(こんな人がいるなら…私って一体何なんだろ)
あれこれ悩んで行き当たりばったりでギリギリに生きているような自分の苦しみは、本当につまらない、下らないものなのかもしれないと心底思った。思わざるを得なかった。
「なんか、すっごい自信無くしたんですけど…」
こういう事をルサンチマンの蓄積とでも言うのだろうか。ここはむしろ張り切って頑張るべきところなのだろうが…。
深いため息をついてシートをもう一度見つめ、生徒会室を後にする。
後になってこのときの事を聡雅に言ってみると「それってお前が最初に『適当に埋めて、ダメだったらやり直すしかない』って言った事をもう一度反復されただけで、根本的問題は解決してないんじゃん」と事も無げに返されて仰天してしまったのであるが、このとき彼女を仰天させたのはもっと違う―――それこそ性質も事態もまったく異なる事だった。
ちょっとしたショックに立ち直れず、ぼんやりと彼女が帰路を辿ろうとしているときにそれは起こった。