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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第1話 マ界のマの字はオカマのマ4


 クラウス魔導学院にあるカーシャの研究室。というか、個人的な部屋。
 ロウソクの明かりだけの薄暗い部屋で、カーシャはピンクの湯のみで茶を飲んでいた。
「で、妾に何の用だ?(こいつの方から妾を尋ねて来るとはな)」
 カーシャの黒瞳が見据えているのはユーリだった。
「どんな非合法なことでも困ったことがあれば、ここの生徒はカーシャ先生に相談に来るとルーファスに聞いてきました」
 ルーファスはユーリの横でうなずいた。
「そうなんだ、ちょっと難しいお願いなんだけど、カーシャだったらどうにかできるかなぁって」
「妾に不可能なことはない。言うてみろ」
 自信満々にカーシャは爆乳を揺らした。
 まずはこのお願いからユーリはすることにした。
「この学校に編入できないでしょうか?」
「ほぉ、名門クラウス魔導学院に編入か……妾の力を持ってすれば偽造文書など簡単にできるが、いくら出す?」
 悪徳商売だった。
 もちろんユーリは一文無しだ。
 ユーリは横目でルーファスを見て、肘で彼の脇を突付いた。
「私が払うの? ムリだよ、私だって今月は苦しんだから(来月の仕送りまでまだあるなぁ)」
「元はといえば、ルーファスがこの世界にアタシを召喚したんですよ。ちゃんと責任を取ってもらわないと困ります、損害賠償請求の申し立てしますよ?」
「そ、それは……(ユーリが勝手に召喚の邪魔したんじゃ……でもやっぱり僕のせいなのかなぁ)」
 二人の会話を聞いていたカーシャは鼻で笑った。
「ふふっ(またルーファスのヤツ、召喚を失敗しおったのか。今月に入ってルーファスが失敗した召喚は、妾が知る限りでも五回はあるな。みな騒動になったお陰で妾は退屈せんで済んだがな……さすがへっぽこ魔導士、ふふっ)」
 一回目、新年度はじめの実技テスト。
 二回目、その追試でビビを召喚する。
 三回目、再追試で失敗しないために練習中、異界の魔物を呼び出してしまう。
 四回目、再追試でビビの母親を召喚する。
 五回目、再々追試でユーリを召喚する。
 ちなみに全部、不慮の事故が原因で失敗している。
 カーシャは生徒の間でも有名な四次元胸の谷間からせんべえを出し、ポリポリしながらあっさりさっぱり簡単に返事を出した。
「わかった、金は後払いでもよい。編入の手続きをしてやろう」
「本当ですか?」
 ユーリは身を乗り出して飛び上がった。
「本当だ。ただしそちらが約束を破るようなことがあれば……わかっておるな(両生類?)」
 ええ、弱みを握られていますものね!
 ユーリは深く頷いた。
「ありがとうございます(……足元見やがってオバさんめ。商売人として屈辱だ)。あと、ほかにもお願いがあるのですが、聞いてもらってよろしいでしょうか?」
「なんじゃ?」
「住むところがないので手配してもらえますか?」
「学生寮を用意してやろう、それはサービスでやってやる」
 本当にサービスですか?
 実は恩を売るためとか、あとで料金請求とかしそうだ。
「(ちっ、学生寮か……今は仕方がないな)。もう一つお願いがあるのですが?」
「まだあるのか?」
「サキュバスの力を取り戻す方法をご存知ですか?」
「お前、力を失ったのか?(やはりサキュバスか。だがそれにしてはフェロモンが足りんと思っていたが、力を失っていたためだったのだな)」
 力を失ったことはサキュバスとして恥。それを口にすることはユーリにとって耐え難いことだったが、治療する方法を探さなくてはいけない。
「はい、おそらく何もかも失いました(あはは、サイフまでなくしたし)。今のアタシはただの人間と同じです(可愛さは負けないけど)」
「調べてやろう。サキュバスの力を失っても、生きていくことは可能だ(同属からバカにされながらな、ふふっ)。それとも早く取り戻したいわけでもあるのか?」
「あります!」
 ユーリは身を乗り出してカーシャの眼前まで迫り、言葉を続けた。
「愛する人ができたから、絶対に落としたいんです!」
 その言葉を聞いたカーシャの瞳が輝いた。
「ふふっ、青春だな! よかろう、治す方法はわからんが、惚れ薬なら調合してやろう!」
「本当ですかカーシャ先生!」
 ユーリとカーシャ互いに手と手を取り合った。なんだか二人の仲がグッと近づいた感じた。
「有料だがな!」
 このカーシャの一言でグッと二人の距離は遠ざかった。
「あはは、やっぱり有料ですか!(やっぱりこのオバさん嫌いだ)」
 笑顔全快のユーリ。ちょっぴり握る拳に力がはいっていた♪
 カーシャは胸の谷間から分厚い本を取り出した。
「たしかこの本に材料が……ほとんど学院の保管庫からパクれば大丈夫だが、マンドレイクの在庫が切れていたな。街の魔導ショップで買って来い」
 さらにカーシャは本を読み続け、急に難しい顔をになった。
「問題はこれだな」
 テーブルの上に本を広げ、カーシャの長い指が差したのはリンゴの絵だった。
「楽園にあるという?ロロアの林檎?だ」
 ロロアの名前を聞いてユーリは即座に反応する。
「ロロアはアタシが生まれた月の守護神です。愛の女神ロロア、その美しさは鏡にも映せないと聞いたことがあります」
「そうだ、マンドレイクと?ロロアの林檎?を用意したら、惚れ薬をすぐに作ってやろう。だたし……」
「ただし?(金の話かな)」
「愛の秘薬は十五歳未満は使用禁止だ。お前いくつだ?(魔族の歳はわかりづらいからな)」
「じゅう……じゅうさんさい……ですけど、やっぱり十五歳ってことでお願いします!」
「うむ、まあよかろう(別に使うの妾じゃないもんね〜!)」
 ここまでユーリを連れて来ただけで役目を終え、会話に参加せずにせんべえを食べながらマンガを呼んでいたルーファスに、鋭いカーシャの眼が向けられた。
「お前も行くのだぞ?」
「はぁ? なんで私が行かなきゃいけないの?」
「お前が召喚した娘であろう。男として責任取ったらどうだ(ビバ婚約……ふふっ)」
「う〜ん、たしかにね。召喚した私が責任を取らなきゃ……(って本当に僕の責任なのかな、なんか違うような気がするんだけど)」
 でも、結局ルーファスもユーリの材料探しに同行することになった。